レポートや卒論で欠かせないのが「考察」です。
考察では自分の考えを書きなさいと言われて、「面白い実験だった」「実験が成功してよかった」などと書く人もいます。
でも、これは考察ではなく感想です。
考察とは、いったいどんなことを書けばいいのでしょうか。
他にも、レポートと卒論の書き方に関する記事はいろいろあります!
まずは、しっかりと情報収集してみてはいかがでしょうか?
※ 「レポートと卒論の書き方|テーマ・構成・考察」の記事一覧はこちらから
Contents
「考察」とは何か?
実験や調査で得られた結果に、自分の発想で分析・解釈を行い、結論へと導き出す過程が考察です。
分析や解釈は、主観的な感想ではなく、学問的な根拠に基づいて行われるべきです。
考察について知るために、まず、一般的な論文の構成を見てみましょう。
論文の構成
1、問題: ■■■について疑問を持った。
↓
2、仮説: それは、~~~という理由ではないかと思った。
↓
3、実験(観察・調査): ■■■を、△△△の方法で調べた。
↓
4、結果:実験や調査の結果は、こうなった。(文章・グラフ・表・図などで明示)
↓
5、考察: 実験(観察・調査)からわかったこと。
- 事前の予想とどう違ったか。
- (予想と違えば)なぜ、予想と違ったのか。
- 結果は、どういうことを示しているか。
↓
6、結論: 最終的に〇〇〇ということがわかった。(今後への展望もあれば示す)
考察は、結果や結論とは違うのか?
「結果」と「結論」の間に「考察」が挟まっていますね。
実験や調査から得られた事実が「結果」です。
その結果から、「結論」へと導き出すためのものが「考察」です。
実験や調査の結果が、なぜ、こうなったのかということを自分で分析して、そこから得られることを書いていくことが「考察」です。
つまり「結果」を、独自の視点・発想で分析し、自分の考え述べるものです。
単なる感想ではいけません。
学問的な根拠に基づいて得た深い考えです。
その前に、どうしてもレポートや論文を書くのが苦手な方もいると思います。そんな方にはこちらの記事がおすすめです。
考察では、どういうことを書けば良いのか
1、結果の要点
結果を要約します。
どんな結果が得られたのか、まとめます。
2、実験(調査)方法の評価
必要な場合は、実験(調査)方法に欠陥はなかったかを評価します。
3、仮説と異なる場合は、なぜ異なったのかを考えます。
仮説通りであれば、そこから導き出されることは何かも書きます。
4、自分なりの分析や考え
結果から考えられることは、何か、最初に提示した問題を解決する方向で分析します。
実験などの結果をもとにして、どうしてこうなったのかを導き出せばいいのです。
しかし、「よかったと思いました」のような感想ではいけません。
論理を組み立てて、客観的に書く必要があります。
ですから、レポートや論文を評価する先生たちは、考察がどのように書かれているかに注意します。
論理的な思考力が表われるからです。
でも、これだけ見ても、「なんのことやら?」と思う人も多いでしょうから、具体例で見てみましょう。
ちなみに、以下の例はすべて、分かりやすくするための、虚構の(でっち上げた)実験です。
ネタだと思って読んでくださいね。
ところで、卒論とレポートの違いがよくわからない方はいませんか?こちらの記事で詳しく解説してます。
「考察」を具体例で考えよう…例文1「くだらいなダジャレで、人は寒くなるのか?」
問題(研究の動機)
マンガなどで、「くだらないダジャレを言うと雪が降ってくる」「その場にいる人が凍り付く」という場面を目にすることがある。
確かに「寒いギャグ」という言い方はあるが、くだらないギャグやダジャレによって、人は本当に寒さを感じるのかと疑問を持ったことから、実験によって検証しようと思った。
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仮説(研究の目的)
「くだらないダジャレ」に対して、人体はどのような反応を示すかを調査することによって、ストレスが及ぼす人体への影響を考察する。
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観察・実験・調査(研究方法)
被験者50名の前で、実験者がつまらないダジャレを5分間言い続け、被験者の皮膚の表面温度・体温・血圧・脈拍数の変化を計測する。
表面温度は、サーモグラフィーで被験者の鼻の周囲の温度を測定する。
心理的な状況は、被験者へのアンケートにより調査する。
対照実験として、プロのお笑い芸人のライブ映像を5分間見せ、同様に身体的な変化を調査する。
先行論文としては『ストレスの人体への影響を評価する』(〇〇大学■■■■氏)がある。
↓
結果
被験者の皮膚の表面温度、体温、血圧、脈拍数の変化を、表とグラフで示した。
心理状態(実験中、どう感じていたか)を、ひとりひとりにアンケート形式で尋ねた結果は次の通りである。
アンケート結果から、被験者を「ダジャレをつまらないと感じた」「何とも感じなかった」「ダジャレをそれなりに楽しんだ」という3つのグループに分け、実験者に対する感情、「嫌悪感を抱いた」「何とも思わなかった」「同情した」と合わせて、被験者のダジャレに対する耐性の強弱の目安とした。
↓
考察
先行論文の手法を参考にして関連性を分析した。
プロの芸人のライブ映像を視聴することによって、被験者の皮膚温度、体温などは明らかに上昇した。
映像を見て笑ったため、軽度の運動をした後と同じような状態であったと思われる。
一方、つまらないダジャレを聞いている間の変化は、個人によって大きく異なることがわかった。
アンケートから推測される心理状態と身体的な変化には、相関関係があった。
「それなりに楽しんだ」「実験者に同情した」と答えたダジャレ耐性が強いグループでは、変化が目立たなかったが、「つまらないと感じた」「嫌悪感を抱いた」と答えたダジャレ耐性が弱いグループでは、体表面温度が低下し、脈拍数・血圧が上昇する傾向が強かった。
ダジャレ耐性の弱いグループでの変化が大きいのは、ダジャレというストレスにより自律神経の交感神経が刺激され、血管が収縮した結果と思われる。
交感神経が働くときに、毛を立たせる「立毛筋」も刺激を受けることは以前から知られている。
その際に、寒くなくても「ゾクゾク」とした感覚に襲われる。(△△大学〇〇〇〇氏の研究による)
このことから、くだらないギャグでストレスを感じると交感神経が働き、血管が収縮、皮膚表面温度の低下、血圧の上昇などが起こるが、同時に立毛筋が刺激され、ゾクゾクとした感覚が生まれ、寒く感じると判断される。
上の考察を確かめるためには、実験前後で被験者の血液を採取し、アドレナリンの分量などを調べることが必要となる。
今回の実験では、被験者の心理状態は自己申告によるアンケートから判断したために正確さに欠ける点があったことと、血液の成分までは調べていないということが、反省点である。
↓
結論
「くだらないダジャレで、人は寒いと感じる」という表現は、「ストレス」と「交感神経」の関係から、真実であると言える。
例文の解説
50人の被験者の前でくだらないダジャレを言って身体の変化を調べたら、こんな結果が得られた、という事実が「結果」です。
その結果から、ダジャレをストレスと感じる人たちには、身体的な変化があり、それは交感神経の働きだと考えられる、と分析するのが「考察」です。
だから、「くだらないダジャレで人は寒いと感じる」ということは事実である、というのが「結論」です。
例文2「看護現場における声かけの意味とは」
もう一つ簡単な例文で考えます。
問題
看護師は、患者に対して、どのような態度で接するのが好ましいのだろうか。
↓
仮説
看護師が、入院患者に積極的に声をかけた場合と声をかけなかった場合を比較すれば、患者の入院生活に対する感情に違いが出るだろう。
↓
実験
入院患者を、入院期間と病状が等しくなるように注意を払いながらAとBの2つのグループに分けた。
Aグループには看護師が常に自分から声をかけるようにし、Bグループは看護師が自分から声をかけることはしなかった。
実験期間は1週間である。
↓
結果
実験前と実験後の2回、患者に「入院生活の快適度」に関するアンケートを実施した。
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その結果を表とグラフで表わした。
↓
考察
アンケートの回答を実験の前後で比較すると、看護師が声かけを行ったAグループは、Bグループよりも入院生活を快適に感じる割合が30%、高くなった。
自由回答欄に意見を書いてもらったところ、看護師をねぎらう言葉がAグループでは実験前の3倍に増えたが、Bグループでは半分に減った。
これらのことから、看護師が患者とコミュニケーションを取るようにすると、患者は入院生活に対して快適度が上昇すると分かった。
看護師は患者と接する時間が長いため、患者に大きな影響を持っていると言える。
予想以上に、看護師の態度が患者に与える心理的影響が大きいと、数字で示された。
↓
結論
患者に対して看護師は積極的に声かけを行い、常にコミュニケーションを取るように心がけるべきである。
(解説)
アンケートの回答を表わしたのが結果で、それを分析したのが考察です。
看護師が入院患者で実験してはいけませんね。
でも、もし許されるなら、こんな実験をするとどうなるだろうかと興味があります。
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まとめ
考察とは、実験や調査の結果を元に、分析を行い、自分の考えを書くということです。
結果から結論を導き出す役割があります。
結果の要点や、実験手法の評価、分析などを書きます。
自分の思い込みは捨てて冷静に分析し、考える必要があります。
なるほどそういうことか、と読む人を納得させる考察を書いていきましょう。
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