みなさんパンはお好きですか?

管理人が子供のころは、家庭でパンを焼くなんてしゃれたお母さんはあまりいませんでした。どのご家庭でも、たいていの場合には町のパン屋さんかスーパーの袋入りのパンのどちらかを食べていました。

いつのころからか、「天然酵母」パンという文字をよく見かけるように。
例えば、「天然酵母だから、風味ゆたかで、安心」というようなキャッチフレーズ。

「天然」とつくと、何やらからだに無害・安心・優しいというイメージがありますが、そもそも「天然酵母」とは何なのでしょうか?

ドライイーストと何が違うのか、「天然酵母」パンとスーパーなどで流通販売しているパンの違いをリサーチしてみました。

(関連記事)この記事を読んでいる方におすすめの関連記事はこちらもどうぞ。

※ 卵の色の違いは栄養価の違い?値段の違いは何の違い?意外と知らなかった卵のヒミツ

※ 栗の皮の簡単なむき方を教えて!渋皮がめんどくさい!

そもそも「酵母」とは何か?

酵母とは、肉眼では見えない単細胞の微生物(菌類)です。単細胞生物って習ったことありますよね。この「酵母」を使って、ミソやしょうゆ、お酒やビールなどが作られます。そしてパンも同様です。

この酵母は外部の有機物を栄養分として吸収します。例えば、ビールなどの場合には麦汁にある糖を酵母が食べるために、アルコール分や泡になるガス、香り成分を作り出します。

自然環境でも、果汁や樹液、海水などにも広く存在しています。つまり、自然界にはいたるところに酵母が存在しているのです。

例えば、日本酒を作っている酒蔵。

お酒を発酵させる蔵は決して新築にしたりしません。何故かというと、その蔵そのものに酒酵母が住み着いていて、その酒蔵のお酒の味を左右するからです。長年培った味や風味を変えないために、蔵ごと大切に受け継いでいるのです。

パンと酵母の関係

では、パン作りで「酵母」はどんな役割をするのでしょうか?

酵母はお酒やミソ、しょうゆなど、様々な発酵食品に使われています。ビールでしたら「ビール酵母」、お酒なら「清酒酵母」、パンの場合には「パン酵母」です。

パン酵母はパン生地に含まれた糖類を酵素により分解。その過程で大量の炭酸ガスを発生し、パンをふくらませるのです。ガスだけではなく、味や香り、パンの焼き色のもとになるさまざまな成分も同時に生成されます。

パンの風味や膨らみ方は、酵母の種類によって異なってくるというわけなのです。

ドライイーストと天然酵母ってどうちがうの?

ご家庭でパンを焼いたことのある方なら、スーパーでドライイースト(イースト菌)が売られているのを知っていますよね。「イースト菌」はパンを膨らませるものですが、「天然酵母」とは違うものなのでしょうか?

イースト菌と天然酵母は実は同じものだった!

「酵母」を英語に訳すと「イースト」で、イースト菌は酵母という意味です。

自然界に様々な酵母が存在していますが、その中でもパン作りに適した酵母を選択し、純粋培養したのがイースト菌。つまり、「イースト菌」はパン作りに適した「パン酵母」なのです。

これに対して、「天然酵母」はあえて「天然」と呼んでいます。では「イースト菌」は人工物なのでしょうか?
先ほども書きましたが、酵母は微生物。人口的に作り出すことはできません。

自然界にある酵母の中から人が種類を選別して培養したという意味では、自然の姿ではないのかもしれませんが、それは「天然酵母」も同じ。

「天然酵母」は、果物や野菜などに付着する酵母やカビ、細菌を増殖させたもので、いわゆる昔ながらの「パン種」です。これもパン作りに必要な状態や量になるまでは人間が細菌を増殖培養させるのですから、「天然」と「天然ではない」ということの違いはあいまいなのです。

そのため、最近ではそうした「天然酵母」という表現は不適切として「パン酵母」という表現が普及してきています。

ただし、実際にはいまだ「天然酵母」という表現は無くなってはいません。

あえて違いをつけて呼ぶとしたら、「イースト菌じゃないパン酵母」と呼ぶのが正しいかもしれません。

「自家製酵母」とはいっても、「自家製酵母」も売られていますので、それを買ってきて使ったパンが「自家製酵母で作ったパン」なのかと言うと、それも違いますよね。ちょっとややこしいお話です。

安全性の違いはあるのか?

イースト菌は純粋培養されたパン酵母であるのに対し、天然酵母は「自家製酵母」となり、イースト菌に比較すると不純物や余計な細菌も含まれますので、不純物の量をもってしてどちらの方が「安全か」というと、どうやらイースト菌に軍配があがりそうです。

とは言え、酵母菌は自然界や私たちのからだにも存在するもの。
安全ではないということは無いのです。
ご家庭で天然酵母づくりにチャレンジした際に発酵に失敗してしまった場合にはカビなどの心配はありますが、その点をのぞけばドライイーストと天然酵母には安全性の面ではそれほど大きな差はありません。

ではイーストフードはどうでしょうか?
なんとなく名前が似ているので、「これもイースト菌の一種?」と思ってしまいますが、実はこれは「イーストを活性化させる食品添加物の総称」。
消費者庁で認められている18種のうち1つである「臭素酸カリウム」などは発がん性などの点で一時話題になりました。

食品添加物による害が心配だという観点からすれば、イーストフードが一番危険、次に乳化剤などが入ったドライイースト、最も安全なのが天然酵母、という考え方もできます。
専門家の間でも見解の分かれるところですが、食品添加物も一生毎日とり続けても害の出ない範囲で使用することが定められていたりもしますから、安全面はどの点に重きを置くかで考えるのが良いのでしょう。

味に違いはあるのか?

酵母の種類の違いによって味や風味に違いが生まれるので、当然のことながらイースト菌と天然酵母(※)では味は異なります。

※どちらも酵母ですが、ここではあえて説明のために「天然酵母」と記載します。実際にはどちらもパン酵母です。

いわゆるイースト菌は純粋培養種で、わたしたちが昔から慣れ親しんだ味のはず。それに対して、天然酵母は元となる細菌の種類や量によって全く異なるものになるので、一口に天然酵母といっても、その天然酵母で作られたパン同士を比較したとしても味が異なります。

「天然かどうか」という分け方で味が違うというわけではありません。
製パンに適した菌株だけを純粋培養して作られたドライイーストと天然酵母との違いが明確に出るのは、パンが焼きあがったときの味や香り、食感といった部分。

ドライイーストの場合は乳化剤や保存料としてのビタミンCなどが添加されるものの、ほぼイースト菌のみ。
一方で天然酵母とは、果物などに付着している酵母をもとにしているため、イースト菌だけでなく多種多様な微生物が含まれています。
そのために天然酵母で作ったパンにはドライイーストで作ったパンとはまた違った独特の風味や香り、食感があります。

天然酵母づくりに挑戦してみたことのある方はご存知かと思いますが、果物で作るにしても何を使ったかによって、風味に違いが出てきますよね。
これはもともと使用した果物や穀物が持っている香りなどが影響しています。

家庭で天然酵母作りにチャレンジする人には、ドライイーストの独特の酸味が好みに合わないのでという理由で作り始めたという人も。

栄養やカロリーなどには違いはあるの?

全く同じです。

厳密にいえば、ドライイーストひとつをとっても商品により多少の差が出ます。
たとえば、パン作りが趣味という人には有名な「赤サフ」の愛称で親しまれているドライイーストの100gあたりのカロリーは 392kcal。
一方乳化剤やビタミンC無添加の乾燥酵母である「白神こだま酵母 ドライ」では100gあたり375kcal。
同じく無添加ですが、生種を起こす手間が必要な「ホシノ天然酵母」でも100gあたり373kcal。

100g単位で見ていくと違いは出るものの、とはいえ実際には1回のパン作りに100gも使いませんよね。
食パン1斤に使用するドライイーストの量は3~4g程度ですから、パン1斤あたりで考えれば1kcalにも満たない差になります。

また家庭で果物を使って作った自家製酵母の場合は厳密にカロリーを計算するのは難しいですね。
果物自体は元種に入れませんし、砂糖を足して作った場合でも発酵段階で果物自体や追加した砂糖の糖分は消費されていることが想定されるため、ネットなどで調べてみても「おそらくほぼゼロ」という考え方が多いようです。

結果的に、ドライイーストと天然酵母と呼ばれるもののそれ自体のカロリーの違いはほぼ「ない」と考えて良さそう。

あくまでも酵母はパンを膨らませたり、風味、香り、色の元になるもの。栄養価やカロリーは、パンに使われている材料によって決まります。
出来上がったパンのカロリーとして考えても、イーストとして使用するものの種類で左右されることはほぼないと考えて良いでしょう。

イースト菌を使わない理由は?

天然酵母はイースト菌と比較して膨らみにくく扱いにくいこともあり、ある程度のパン作りの知識や経験が問われます。

それでも天然酵母を使う理由としては、あえて「天然」と書くことで、消費者のイメージがよくなることから、取り入れて宣伝文句にするようになったようです。

また、天然酵母を使うことで、他のパンと異なるオリジナルの風味を生み出すことになるので、違いを求める消費者への訴求力として自家製の天然酵母を使う場合もあります。

扱いにくさという理由で言えば、自宅でパン作りを楽しむ人には自家製天然酵母を作って違いを楽しむという楽しみもありますね。

「作りやすいこと」や安定した出来を求めるにはドライイーストの手軽さはありがたいですが、自家製の天然酵母から作るパンにはまた違ったパン作りの楽しみがあります。
膨らみやすさや扱いやすさなどの違いといった大量生産では難点となってしまうポイントもまた、趣味のパン作りでは面白味のひとつでもありますね。

(関連記事)この記事を読んでいる方におすすめの関連記事はこちらもどうぞ。

※ 松茸を保存するには冷凍ができる?保存期間はどれくらいなの?

天然酵母パンとスーパーのパンの違い

もうお分かりかと思いますが、天然酵母を使ったパンとスーパーで売られているパン酵母を使ったパンの違いは、酵母の違いだけです。

同じように酵母を使った他の発酵食品(ミソやしょうゆ、お酒など)も、メーカーによって、味が違いますよね。それとまったく同じということ。

酵母の種類で味や風味が変わるので、お好みの味を選べばいいのです。

天然酵母の作られ方

では具体的に「天然酵母」とは、どうやって作られているのでしょうか?

何からできる?実はカンタン、酵母液の作り方

色々な果物で作ることができますが、YouTubeなどではレーズンを使った方法が多く紹介されています。

レーズンのほかに、家庭での天然酵母作りに使える材料といえば

  • バナナ
  • りんご
  • いちご
  • ぶどう
  • みかん、オレンジ
  • レモン
  • キウイ

などなどなど、枚挙にいとまがない!というほどの種類。

特にみかんやオレンジ、レモン、グレープフルーツといった柑橘系の果物では発酵が速いため初心者向きと言われています。
使えるものがたくさんありどれも手に入りやすいというのも、自家製酵母からのパン作りにチャレンジする人が多い理由のひとつかもしれませんね。

自家製酵母液の基本的な作り方は、どの果物を使ってもおおむね同じです。

  1. 水と果物を煮沸消毒した瓶に入れ密閉、暖かいところ(27℃前後がベスト)で保管
  2. 1日1~2回、フタを開け閉めして瓶をゆする

なんだか難しそうなイメージなのに、実は作業的にはたったこれだけなんですね(笑)。

工程ごとのポイントとしては、水と果物の段階で瓶には 1/3程度余裕がある状態にしておきましょう。
発酵には空気の存在も不可欠です。
1日1度瓶をゆする際にフタを開けて空気の入れ替えをしますが、これは単純に開けて閉めるだけでOK。
また、完熟した果物の場合には必要ありませんが、まだ若い場合には砂糖を足すことで発酵を促します。

スポンサーリンク

果物は無農薬であれば皮ごと使用できますが、そうでなければ皮をのぞいて使用する方が安心ですね。

●レーズン酵母の作り方

ここからが本番?!酵母液から元種を作る!

作った酵母液から「元種」と呼ばれる、いわば「パン生地のもと」を作ります。
基本は酵母液と粉(作るパンの種類により粉の種類をあわせます)を1:1~1:1.5ほどで合わせてよく混ぜます。
速く作ろうというときには常温で3時間ほど、ゆっくり発酵させる場合には冷蔵庫で2日ほど寝かせます。
常温であれば数時間で済む発酵時間ですが、パン種は生き物、ゆっくり発酵させる方がより小麦など本来の風味が出ますよ。

発酵ができているかの目安は時間よりも「どのくらいに膨らんだか」で見るのがコツ。
元種を作り始めたときのボウルなど中の分量から2倍程度の大きさに膨らんでいれば完成です。

作るパンの種類によって配合も異なりますが、元種の段階で塩・砂糖、水を足して作ることが多いようです。

●レーズン酵母を使ったパンの元種の作り方

天然酵母より手軽にドライイーストで作るなら?

酵母液で1週間ほど、元種で1~3日ほどもかかる天然酵母でのパン作り。
その時間を短縮できるのがドライイーストの魅力です。
ドライイーストであれば、予備発酵すら不要でパン生地を作る段階でそのまま入れて使えるものもたくさん。
酵母液~元種作りという期間を短縮してパンを作ることが可能です。

ドライイーストには乳化剤やビタミンCが添加されたものもありますが、同じように簡単に使える無添加の乾燥酵母も含まれます。
ドライイーストの利点は良いけれど、少しでも添加物のないものをという人には、そうしたものを利用するのもおすすめです。

このタイプであれば、ドライイーストを使う手軽さでありながら無添加の「天然酵母パン」が気軽に焼けますね!

 

出典:cuoca

(関連記事)この記事を読んでいる方におすすめの関連記事はこちらもどうぞ。

※ 生米は冷凍庫で保存したらどうなる?冷凍と冷蔵、どっちがいいの?

※ 土用丑の日 うなぎが高価すぎる~この食べ物で夏を乗り切る!エアうなぎ?

まとめ

いかがでしたか?

「天然酵母」パンはどこか違うのかな?と漠然と思っていましたが、それはなんと「酵母の種類の違い」だけでした。

美味しいパンのためにパン酵母が工夫されるのであれば、食べる側にとっては嬉しいことですね。

それでは。


 

関連記事