サイレント・キラー(静かなる殺人者)」と言われる、高血圧。
症状が出ない病気だと思われがちですが、めまいや吐き気を起こすこともあります。
高血圧が原因で吐き気やふらつきなどの症状が出たとき、とるべき対処法は何でしょうか?
血圧の高い方にも、そのご家族にも、読んでほしい記事です。

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高血圧とは、どういうもの?

高血圧とは、文字通り、血圧が一定の水準以上の高い状態が続く病気です。
血圧とは、血液が体中に循環する際に、血管、特に動脈の壁にかかる圧力のことです。

どうして、血圧が高くなるのでしょうか?
それには、血管の硬さが関係しています。
動脈にコレステロールや中性脂肪が付着して、血管が硬く狭くなることを動脈硬化といいます。
動脈硬化が起きると、血管の抵抗が大きくなって、心臓は、強い圧力をかけて血液を送り出さなくてはいけなくなります。これが、高血圧の大きな原因です。

動脈硬化以外にも、血圧が高くなる原因はあります。心臓から送り出される血液の量が多くなっているときも、心臓は力をかけて血液を送り出す必要があり、血管に強い圧力がかかります。

血圧が高いと、血管にはいつも負担がかかっているため、血管の壁が傷ついたり固く硬くなったりして、もろくなってしまいます。その結果、動脈硬化が、ますます進むという悪循環に陥ります。
動脈硬化高血圧動脈硬化高血圧…」です。

高血圧の症状

高血圧は、最初のころは自覚症状がありません。健康診断で高血圧が見つかり、治療を始める人もいますが、気づかずに放置する人も多いのです(高血圧と言われても、放置する人もいるくらいですから)。

血圧の高い状態が続くと、まず「頭痛・肩こり」などの症状が起こってきます。しかしこれは、日常のストレスや疲労でも簡単に起きる症状なので、あまり気にしないでいるうちに高血圧が進んでしまうこともあります。

次に、頭痛・肩こりの他にも「めまい・吐き気」が起きてきます。ここまで来たら高血圧によってすでに動脈硬化が起こっている可能性があります。

さらに進むと、「のぼせ・動悸・息切れ・足のしびれ」という症状が出てきます。高血圧のために腎臓の細かい血管が傷むと、「むくみ・頻尿・多尿・尿が少なくなる」などの症状も現われます。

しかし、あまり自覚症状のないまま高血圧がひどくなって、ある日突然、重篤な疾患、たとえば筋梗塞や脳梗塞、脳卒中などを引き起こしてしまうこともあります。これが高血圧の恐ろしさです。

突然の大病を防ぐためには、血圧が高いとどうなるのかを知って、早期発見・早期治療に努めるべきなのです。頭痛・肩こりの段階でも、それが長く続くようなら、一度病院に行ったほうがいいでしょう。

高血圧によるめまいと吐き気

高血圧でめまいと吐き気が起こることがあります。

吐き気の原因は、高血圧で、脳の血液循環に異常がおきてしまい、脳内の圧力が高まって、延髄にある嘔吐中枢神経が刺激されてしまうことだと思われています。

また、耳の中にある「三半規管」という平衡感覚を保つ器官に流れる血液が少なくなると、平衡感覚が失われてしまい、めまいや吐き気が引き起こされることも指摘されています。
この場合、血液が脳にスムーズに流れていないのです。
めまいがおこったとき血圧を測定し、血圧が高くなっていても、あわてて血圧を下げる薬を飲んではいけません。
体が、脳に血液を送ろうとして、血圧を上げていることがあるからです。それに、めまいに驚いて一時的に血圧が上がっただけかもしれません。

高血圧の人の嘔吐とめまいは、脳内の血流の異常を示しています。
放置しておくと、脳出血や脳梗塞、脳浮腫、意識障害などの重大な疾患へと進んでしまうことがあります。ですから、たとえ軽い症状でも、病院に行って、診察を受けてください。
高血圧が原因ではないめまいと吐き気かもしれません。それを確認するためにも、受診しましょう。

くも膜下出血・脳梗塞などの脳血管の疾病でも、吐き気やめまいがおこります。
めまい・嘔吐に加えて、激しい頭痛がしたら、脳血管の疾病を発症した恐れもありますから、急いで病院に行きましょう。

高血圧によるめまいと吐き気」→「病院に行く

命を守るためです。

血圧が下がりすぎて起きるめまい

高血圧とめまいに関しては、もう一つのケースが考えられます。
それは、「血圧が下がりすぎて起きるめまい」です。

高血圧の人が、薬で血圧を下げる治療をおこなっているとき、血圧が下がりすぎて、フラフラとしためまいを起こすことがあります。
少しくらい血圧が下がっても、大切な脳に送られる血流は確保される仕組みがあるのですが、あまりに血圧が下がりすぎると、脳の血流量が減って酸欠状態になり、立ちくらみのように、フラフラとするのです。

血圧が普通の人でも、寝ているときや座っているときに、急に立ち上がると、血圧が急激に下がって立ちくらみやめまいを起こすことがあります。これを「起立性低血圧」といい、血圧を調整する自律神経の不調が原因と考えられています。

なお、降圧剤を飲んでいる人の中には、薬の影響で、このような起立性低血圧の状態になることもあります。それまで高血圧に慣れていた脳が、血圧を急激に正常化すると、今までの状態を保とうとする自動調節機能が働き、その結果、血液量が不安定になるのです。

降圧剤で血圧が下がるのは、正常な血圧に近づいていることなので、本来、心配はいりません。しかし、めまいや立ちくらみ、頭痛などを感じるときや、上の血圧(収縮期血圧)が100mmHg(低血圧症の基準)よりも低くなるときは、主治医と相談の上、改めて自分に合った薬を選択することも考えてください。勝手に薬を止めたりしてはいけません。

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高血圧の予防と対処

高血圧の一部は、糖尿病や腎臓病、ホルモン異常など、他の病気と結びついています。こうした高血圧は「二次性高血圧」という名前で区別されていて、高血圧症全体の1割弱を占めています。その他の高血圧は「本態性高血圧」と呼ばれ、基本的に生活習慣が要因となって起こります。

塩分

塩分の量を控えましょう。
塩分を摂り過ぎると、体内の水分量が増えて、血圧を高くしてしまいます。

塩分は一日6g未満

日本人の食生活は、世界と比べてたくさんの塩分を摂取しています。例えば英国の医学雑誌「BMJ OPEN」に、2010年に世界各国の塩分摂取推計量を比較したデータが掲載されています(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2174.html)。そこでは世界平均を一日10.0gとすると、日本は12.4g、米国は9.1gとなっています。そこでは日本だけではなく、アジア各国の塩分摂取量が多いのが見て取れます。ちなみに一番多いのはタイで、13.5gです。

日本人の平均塩分摂取量は毎年減ってきていますが、厚生労働省が2017年に発表した「平成28年『国民健康・栄養調査』の結果」によると、20 歳以上男性で10.8g、女性は9.2gの平均摂取量があります。世界保健機関(WHO)は、塩分摂取量の目標を1日5gとしていますが、それと比べるとすごい違いですよね。

日本高血圧学会は、高血圧予防には1日に6g未満を推奨しています。WHOが出している目標より甘いですが、これは日本人が伝統的に、塩分の多い食生活をしてきていることを加味しているのかもしれません。

カリウムを摂ろう!

実は塩分を多量に摂取しても、一緒にカリウムを多く含む食品を食べていれば、余分な塩分は排出されます。厚生労働省は高血圧改善の食事として、減塩と共にカリウムの摂取を推奨しています。その目安は1日3500mgです。

カリウムは果物・緑黄色野菜などに多く含まれ、特に多く含む食材としては、パセリ、ほうれん草、ひじき、大豆、わかめ、納豆、アボカド、里芋などが挙げられます。なお、3500mgはほうれん草だと約500g、納豆だと1パック(50g)として、11パック(!)程度になります。一つの食材だけで摂ろうとせず、食材の成分量を目安に、効率よく食事に取り入れて行きましょう。

カリウムに関してひとつ注意があります。現代人はほぼ間違いなくカリウム不足で、意識的に摂取することが望ましいのですが、腎臓病が原因の高血圧の人は、むしろカリウムを控えなければなりません。腎臓が弱っているとカリウムを排出できなくなってきて、高カリウム血症になる恐れが出てきます。

食塩感受性高血圧

実は塩分を控えても、高血圧が改善されない人もいます。高血圧には、塩分の影響を受けやすいタイプ(食塩感受性高血圧)と、そうでないタイプ(食塩非感受性高血圧)があるのです。この差は遺伝的なもので、最近は遺伝子レベルでいろいろなことが分かってきています。

ある調査では、両親とも高血圧の場合、子供が高血圧になりやすい素因を持つ確率は1/2、親のどちらかが高血圧の場合は1/3、両親のどちらも高血圧でない場合は、1/20という結果が出ています。親が高血圧の人は、食塩感受性の素因を持っている可能性が高いので、特に塩分に気をつけてください。

タバコとアルコール

過度なタバコやアルコールの摂取は、高血圧だけではなく、様々な病気の引き金となります

タバコは高血圧と動脈硬化を

タバコを吸っていると、血圧は上昇し、悪玉コレステロールが血管の壁にたまりやすくなり、さらに善玉コレステロールが減少します。すでに高血圧になっている人は、タバコによって脳卒中や心筋梗塞の原因である動脈硬化が促進されます。タバコを吸う高血圧の人が脳卒中になるリスクは、吸わない高血圧の人に比べて約4倍になります。

禁煙しようと思ってもなかなか出来ないでいる方。高血圧と診断されたら、そこできっぱりと禁煙しましょう。禁煙を続けていけば、脳卒中のリスクは、タバコを吸わない人と同等にまで低下することがわかっています。

余談ですが、禁煙に成功した何人かの人は、ある日止めようと思ってタバコもライターも捨てて、それ以来吸っていないと言います。「あと何本吸ったら」とか「来週から禁煙しよう」などとは考えずに、止める際は潔く行くのが良いのかもしれませんよ。

アルコールは適量で

アルコールと高血圧との関係は、タバコとそれの関係のように単純ではありません。実は、少量のアルコールには血圧を下げ、善玉コレステロールを増やす働きがあるのです。また、血液の性状を調節しているシステムに作用し、血液を固まりにくくして、血管が詰まる可能性を下げてくれます。

では、高血圧の人はアルコールを摂取したほうがむしろいい?

というわけにはいきません。

アルコールを飲みすぎると、血圧は確実に上昇します。また長年飲み続けている人は、そうでない人たちより高血圧になりやすいというデータも出ています。

ではどれくらいが適量なのでしょう。厚生労働省によると、ビールなら500ml、日本酒・ワインは180ml、焼酎110ml、ウイスキー60ml、缶チューハイ520ml程度が適量です。

ストレスは万病の元ですが、高血圧に関してもそうです。長年飲酒を続けていて高血圧になった人が無理矢理禁酒すると、そのストレスのほうが大きく作用してしまいます。アルコールには気分を楽にさせて、ストレスを緩和する作用もありますし、心筋梗塞や狭心症など虚血性心臓病には、適量のアルコールが良いと言っている研究もあります。

お酒はほどほどに、高血圧になってもならなくても、飲みたければ適量で飲み、週に2回は休肝日を設けましょう。

むしろツマミに気をつけて

実は、高血圧に悪いのは、アルコールよりもそのときに一緒に食べるツマミの方なのです。飲んでいるとどうしても、塩分の濃いツマミや、脂っこいものを食べたくなります。塩分の害はすでに書いたとおりですが、内臓脂肪についてここに書きましょう。

高血圧になる要因には肥満もあります。と言っても、女性に多い皮下脂肪型肥満はそれほど問題になりません。しかし内臓脂肪型肥満の人は高血圧になりやすくなります。内臓脂肪型肥満の人は血液中の中性脂肪が多いので、血液がドロドロになるのです。

ツマミには栄養バランスのとれたものを心がけ、いわしやさばなどの青魚で、血流を良くするDHA・EPAを積極的に摂取しましょう。

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運動不足はダメ

毎日、できれば30分以上、適度な運動をしましょう。

運動には、有酸素運動と無酸素運動があります。有酸素運動は十分に酸素を取り込みながら継続的に行う運動で、無酸素運動は一瞬息を止めて力を振り絞る、瞬発力の必要な運動です。無酸素運動は、一時的に血圧を上昇させるので、高血圧の人は決してしないでください。

高血圧の人には、ウォーキングやサイクリング、水泳などの有酸素運動を、軽くするのがおすすめです。いきなり激しい運動をするのではなく、医師に相談の上で始めてください。有酸素運動は、できれば毎日、継続して30分以上続けることが理想です。

肥満の解消にもつながりますし、運動が血圧を上がりにくくすることも知られています。運動不足だと血管の弾力性が弱まり、その結果血圧が高くなりやすくなるのです。

降圧剤

高血圧の治療は基本的に生活習慣の改善なのですが、それだけでは難しい場合には降圧剤が用いられます。薬には少なからず副作用のある場合が多いので、できれば薬に頼らずに高血圧を治したいものです。

しかし、医師から降圧剤を処方された場合は、医師の指示通りに薬を飲んでください。自己判断で止めたり、量を減らしたりしてはいけません。

日本人はキノコや海藻をよく食べますが、これらの食物には血圧を安定させる効果が期待されます。特に海藻類のヌメリ成分が、近年脚光を浴びています。塩分控えめ、カリウム多めに加えて、キノコや海藻を含んだ食事を、常日頃心がけると、予防と治療効果が期待できます。

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まとめ

高血圧の人に、めまいや吐き気、頭痛などの症状が出たときは、大病の可能性もありますので、病院で診断を受けましょう。高血圧は、心臓や脳の血管の大きな病気を引き起こす恐れがあるやっかいな病気ですから、日頃から食事や運動に気をつけ、医師の指導も受けつつ、血圧をコントロールしたいものです。

 

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