剽窃って何?と思っているあなた。
「これは剽窃にあたります」なんて教授に言われたり、ネットで注意されている言葉を見て、疑問に思った人はいませんか?
いわゆる、盗作に近い概念の言葉なのですが、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説によると、
他人の著作から,部分的に文章,語句,筋,思想などを盗み,自作の中に自分のものとして用いること。他人の作品をそっくりそのまま自分のものと偽る盗用とは異なる。
ということだそうです。
レポートを書くときに、参考文献を見ることは当たり前の作業です。
でも、それを元に書く場合、ルールに従っていないと、「剽窃」だとみなされて、大変なことになりかねません。
なぜそんなに気を遣わなくてはならないのか、実際に書く場合にはどう書けばよいのか、ご紹介します。
(関連記事)この記事を読んでいる方におすすめの関連記事はこちら。
※ 大学入試小論文の書き方は?何が求められているのか分かればできる
Contents
そもそも、参考文献とは何?
新明解国語辞典には、次のように記述されています。
文献とは
何かを知るために役立つ書き物や印刷物。
参考とは
[研究や受験などのために]他人の書いた書物とか教科書以外の書物などを見ること。
参考文献とは つまり、レポートを書く上で、自分のテーマについて考察するときに、見て、知識として役立った書物や書き物すべてのことを指します。
テーマにもよりますが、大抵の人は、自分の疑問を解決する糸口を探すために、書物を読みますよね。
読むと、多少なりとも影響を受けるはずです。
その中で、独自の理論の発展につながることもあるでしょうし、研究内容を広げることもあると思います。
その際に関わった、教科書以外のすべての書き物が「参考文献」ということになります。
新聞、雑誌、ネットの記事、書籍、辞書などいろいろな種類がありますよね。
参考文献リストが必要な理由
高校時代までに、レポートを書いた経験がある人はどれくらいいるでしょうか。
高校で宿題等で出されて書くレポートは、一般的には何かを調べて転記するような「活動報告書」的な役割が多いかもしれません。「レポート」自体の概念が結構曖昧な部分もありますよね。
それをイメージしていると、何かの本や記事、ネットで調べたことをそのまま、あるいは要約して書いても良いのではと思ったとしても、無理はありません。
一方、高校より上の学校へ進学したときに書くことになる「レポート」は、自分の考えを不特定多数にわかるように訴える「論文」的な役割があります。
文字数が少ないため、「小論文」という呼ばれ方をすることもありますが、大事なのは、独自の考え方、研究成果、調査結果などをまとめて書くというプロセスにあります。
論文やレポートというものは、その人のオリジナルの「アイディア」や「考え方」、「プロセス」という、見えにくいものを形にしたものであり、書き手の財産になります。
ですから、他人の財産を盗んで使っても、自分の財産とはいえず、価値が失われてしまうのです。
そればかりか、他人の知的財産の権利を損なうことでもありますので、ひどい場合には訴えられることもあります。
大学生は特に、研究者の卵でもありますので、今後さまざまな論文を書く上で、こういった権利を適切に扱うことと、自分の考え方にプロ意識を持つことが厳しく求められるでしょう。
そうはいっても、人の素晴らしい文章を引用したり、自分の文章を書く上で比較対象として用いたり、説明の中で引き合いに出すこと自体は、ルールを守れば悪いことではありません。
どの部分を「引用」したのか、「他人の考え」なのかを区別したうえで、最後にその参考文献リストを出典として明記しておけばよいのです。
自分の考えと、他人の考え、あるいはどちらの文章なのかをはっきりと区別しなければならないというところが重要です。
剽窃問題でよくある勘違いって?自己剽窃は危険です!
過去の剽窃事件でよくある勘違いが、レポートの序章部分だけ、文献からコピーした内容を書き、本編は自分の文章で書いたものです。内容も結論も参考にしたものとはまったく違うので大丈夫だと思った、というものです。
レポートの序章部分というのは、自分のテーマや考え方を要約し、本編へと読み進めてもらうための大切な部分でもあります。
いわば、そのレポートで表現したい、自分の疑問点や学びを説明するうえで核となる部分です。
それなのに、引用ルールを適用せず、このテーマを選んだ理由はこうこうで、とコピーしたもので表現してしまうと、当然、中身(本編)を見るまでもなく、盗作では?と疑われかねません。
また、次のような例もあります。
あるジャーナルに投稿した論文が、私の過去の出版論文と類似していると判断されてしまいました。編集者によると、内容の20%が剽窃だということで、「この決定は覆せない」というレターとともにリジェクトが通告されました。しかし私は、背景に関する部分を以前の出版物からコピーし、序論で利用しただけです。方法も改善して新たに実験を行い、結果も図表も全て異なります。それでも剽窃とみなされてしまうのでしょうか?
この件のポイントは、自分の過去の論文と似ているから、剽窃と判断されてしまったというものです。
たとえ、自分が過去に書いたものであっても、引用ルールを適用せず、そのままの文章で使ってしまうと、剽窃と見なされてしまいます。
これを、「自己剽窃」といいます。
剽窃というのは、他人のアイディアであったり、文章表現の一部でも、ルール通り引用せず、自分のもののように文章にして発表してしまうことではあるのですが、一旦書き物となった自分のものも、書き物になった時点でオリジナルの知的財産と見なされるのです。
そのため、他人のものであろうが、自分のものであろうが、読んでいる人にはっきりわかるよう、レポートにこの部分を引用して使ったが、今回の自分の考えはこうであると、ルールに則って明記しなくてはならないのです。
具体的にはどのように記載する?参考文献の書き方例
そうはいっても、参考文献リストって、教科書等には最後にずらずらっと並べてあるだけだったりしますよね。
一般的な書籍でも、そのように書いてある場合が多いのです。
関西大学 ライティング・ラボ のWEBページ上で紹介されている文章によると、
新書などの中には、最後に参考文献を載せているだけの本もあります。ただし、新書とは、一般の読者向けに書かれた啓蒙(けいもう)書や、軽い読み物という性質があるため、こまごまとした注や書誌情報を載せないことが多いようです。
という理由らしいです。
引用部分の区別の方法は、「」だったり、1)などの注釈や数値を付けるなど、そのレポートを書くように指示した教授や、科目によってさまざまです。
また、本格的になればなるほど、細かなルールがありますので、それは必ず指導教授に確認するようにしましょう。
そしてレポートの書き方の本は多数出されていますので、一冊は手元に置いておきたいものです。
区別をしたうえで、最後に参考文献リストとして参考にした書籍類を明記するのですが、一般的には下記のように記載します。
著者名『書名』、出版社名、出版年、(該当頁)。
ex.)丸山真男『日本の思想』、岩波書店、1961年、18頁。
引用元: プロが教えるレポート・論文の書き方
また、他にも参考になるWEBサイトがありますので、ご覧になってください。
リストの書き方について、分かりやすく、細かなルールまで書かれてあります。
参照:参考文献の書き方
ただ、大学の教養課程で出されるレポートの課題などでは、あまり細かなルールがない場合もあります。
それでも、最低限、出典元は明記し、ネットからのコピペや無断での書き写しはしないようにしましょう。
剽窃を防ぐツールも開発されており、コピーしていることはすぐにバレて処分を受ける場合もありますし、何より自分の能力を上げるチャンスを失ってしまうことでもあります。
(関連記事)この記事と併せて読むならこちらの記事もどうぞ。
※ 意外と知らない横書き原稿用紙ルール!記号や数字の書き方知ってる?
ネットの場合の書き方は?注意点など
書籍の場合は上記の書き方で良いのですが、インターネットの記事等を見たという場合は、次のように書きます。
著者・発行者名「文書名」、URL、閲覧日。
ex.)中曽久雄「民法900条4号但書の合憲性の行方」、http://www.ed.ehime-u.ac.jp/~kiyou/2013/pdf/27.pdf、2016年4月1日閲覧。
引用元: プロが教えるレポート・論文の書き方
インターネット上の情報を参考文献や資料としてレポートに使うのは、便利ではあるのですが、特別な場合を除き、止めておいた方が無難です。
なぜなら、インターネットにある情報は、簡単に編集できる分、もともとは誰が書いたものなのか不明な場合が多いからです。
また、情報の信ぴょう性も低いのが現状です。
そして、非常に速いスピードで更新、削除が繰り返される世界だからです。
参考文献リストに閲覧日を記載しておくのは、そのためでもあります。
後であなたのレポートを確認するため、参考文献リストから元データのある場所を見ようとしたときに、同じ情報がそこにはない可能性が高いのです。
レポートの内容そのままをコピペするのは論外ですが、多少なりとも、ネット上の情報を参考にするのは、かなり慎重に行った方がいいですし、大元の発信者が誰か突き止めようと調べる時間はもったいないことです。
図書館等で書籍や新聞記事の現物を見ながら、どう書くかを考えた方が、時間の有効活用にもなります。
インターネットを活用したいのであれば、どの図書館に自分の参考になりそうな書物があるかを検索するために使ってみてください。
大学の図書館でも、独自のネットワークで文献の貸し借りや、リスト化を行って学生を強力にバックアップしてくれています。
また、レポートなどを書く上で必要なスキルや方法、参考文献の書き方をWEBページ上に公開している大学も多数あります。
それらを活用するための手法としては、インターネットは最適のツールかもしれません。
書き方のルールあれこれ
インターネット上のブログなど、書き物に使われている引用ルールと、レポートに使われている引用ルールとは、全く異なっていますので、参考にしないようにしましょう。
著作物を侵害しないための独自のルールという本質は同じなのですが、それぞれの世界や目的によって、細かなルールの違いがあります。
そのため、レポートでも、理科系のレポートと文学系のレポートでは、引用ルールが若干違っていたりします。
自分が書こうとしているレポートの引用ルールが分かりにくいのであれば、先生に遠慮なく聞きましょう。
こちらに記載したルールは、あくまでも一般的なものです。
大学や専門学校以上になると、それまでの詰め込みの知識ではなく、自分で考えて学ぼうとする考え方を「学び」と捉えます。
そのため、教科書からある程度の知識を得たなら、そこから自分なりの疑問点や、さらなる発展が考えられるようなテーマを考えるところから、レポート作りは始まります。
テーマがしっかりしていて、独自の考えを論理的に説明できるようになるためには、練習が必要です。
その練習の場が学校なのですから、多少書き方のルールが違っていても、努力の跡が見られれば、何度でも修正のチャンスは与えてもらえます。
とりあえずは、自分である程度形にしてみて、細かな部分は先生や先輩に聞き、修正しつつ、次に書くときには更にスムーズに書けるようにアプローチしてみてください。
間違っても、面倒だからと、安易にコピペの道を選ばないようにしましょう。
現代では、教授方が喜ぶ、高機能な剽窃発見ツールも出てきています。
それがなかったとしても、論文を見慣れている教授陣にとっては、剽窃だろうと見抜くことは簡単なのです。
剽窃をしないための書き方のルールって?
「剽窃」の中でやっかいなのが、「考え、筋、思想」も似通っていると、剽窃と見なされてしまうという点です。
単純に、過去の書き物を参考にして一部の文章そのままを利用する場合、引用ルールに則り、参考文献をきっちり明記しておけば、なんら問題はありません。
ただし、引用の割合がやたら多いと、結局は盗作のように思われてしまいます。よって、自分の考え方や研究に、この部分だけ参考にしましたよ、といえる程度の割合に抑えなくてはなりません。
考えや思想というものは、他人の考え方と偶然似てしまうこともありますから、なかなか判断が難しいものではありますよね。
音楽の世界でも、昔からあるパターンやフレーズを使って新たな曲を作る、ということも行われてきました。
例えばある本を一冊読んで、この考え方に共感したので、書いてあった同じ方法を試したのち、自分の研究に広げたいと考えたとします。
スポンサーリンク
それが即、剽窃にあたるかというと、微妙なところです。
しかし、文章を直接引用しなかったとしても、自分なりの表現に変えて並べ替え、さも自分の考えであるかのように論文にしてしまうと、やはり剽窃ということになってしまうのです。
そこで、微妙な部分で疑われないようにするためには、書き方のルールを考えなくてはなりません。
いくら共感したとしても、その書き物が書かれた当時の著者の心境や環境、想いと、自分の考え方は、まったく同じものではないはずです。
自分なりの考え方や、オリジナルの研究に参考にしたいだけなのだとわかるよう、過去の書き物については、文章表現は全く変えずに、引用ルールを適用しましょう。
そのうえで、構成が似てしまわないよう、論文の筋も見直してみましょう。
他の書き物を見ないですべて書ききってしまうことができれば、剽窃に悩まなくても良いのですが、なかなかそうもいきませんよね。
人間って常に何かに影響されやすいものなのです。
まったく意識せず、悪気もないのに、過去に読んだ本に似てきてしまう場合もありますので、自分の論文を見直すときには、何かに似ていないか、チェックしながら読み返してみましょう。
(関連記事)この記事を読んでいる方におすすめの関連記事はこちら。
※ どうしても書けない〜、そんな大学生のあなたに捧ぐレポートの書き方
※ 看護実習レポートの書き方、上手なレポートとダメなレポート何が違うの?
まとめ
剽窃という言葉は、一般人には聞きなじみがないかもしれません。
他人のアイディアを盗むことが罪になるとは知っていても、考え方や、文章の一部でも、罪になってしまうとは気づきにくいのかもしれません。
レポートが自分のオリジナルの「考え方」を形にするものである以上、他人の文章を借りてきて勝手に補填してしまうと、どこまでがオリジナルかわからなくなり、価値が失われてしまいます。
そこで、必ず行うのが、自分の書いた文章と他人の書いた文章を区別することと、その出典元を参考文献リストとして、レポートの最後に明記することです。
これがないと、いくら盗む目的ではないのだと説明しようと、内容がオリジナリティあふれるすばらしいものだったとしても、評価すらしてもらえず、単位を二度ともらえないくらいの厳しい処置が待っている場合もあります。
新入学生の場合なら、説教だけですむかもしれませんが、不要な減点対象にならないためにも、最低限のルールは守っておきたいものです。
コピー&ペーストが手軽で早くすむ手法だとしても、インターネット上の記事を使うのは、あまりおすすめできません。
誰が書いたものか特定しにくいうえ、情報元としては不正確なものも多く、更新、移動されやすい性質のものだからです。
剽窃や盗作を防ぐための注意喚起も兼ねて、論文の書き方や、なぜ剽窃がダメなのかを丁寧に説明したWEBページを作っている大学もあります。
それらを参考にして、文章作成の技術を高めていってください。
このブログを小さなきっかけにして、オリジナリティあふれるレポート作りを目指してみてくださいね。
⇒ 「文章の書き方」に関する記事の一覧はこちら