大学入試や就活で、小論文を課されることがあります。

ある課題について、600字~800字、または800字~1200字でまとめる形式が多いです。

 

AO入試などでは、内申書と「小論文」「面接」だけで合否を判定するケースもあり、上手に小論文を書く力が、合否を分けると言っても過言ではありません。

 

大学や会社に入った後は、レポートや報告書・企画書などを書く機会が増え、それらが成績や査定に大きく影響します。

レポートや報告書とは、いわば小論文です。つまり小論文を書く力は、後の人生でも、大いに役立つのです。

 

「書けるようになりたいけれど、難しそう……」

いいえ、大丈夫。

小論文は、コツがあります。書き方の「コツ」をつかめば、書けるようになります。

 

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※ 大学入試小論文の書き方は?何が求められているのか分かればできる

 

小論文とは? 作文とは、どう違う?

 

小論文」とは、あるテーマについて、自分の考えを論理的に述べる文章です。

根拠をはっきりさせて、相手を「納得」させなければなりません。

 

「〇〇が普及しているのは、なぜか?」という課題に「とても便利だから、みんなが使っている。私もいいと思う。」

と書くのは、論理的ではありません。

 

「〇〇の△△の機能は、家事にかかる時間を短縮する。そのため、特に共働き世帯を中心に、購入されている。」

のように、「なるほど、そうか」と思わせるように書きましょう。

 

小論文は、文学的な表現(例:体言止め・倒置法など)は避け、文末は、「~である」「~だ」「~だろうか」などを使います。

 

これに対し、「作文」は、自分の思いを書きますが、理由などは必ずしも必要ではなく、自由な表現方法で、思いの「背景」を相手に伝えようとします。

「納得」よりは「共感」「感動」を、読者に与えることが、作文の目的だと言えます。

 

小論文の構造は、「結論→本論→結論」

小論文の構造は、次のようなパターンが基本です。

 

結論」 簡単に結論を書く

本論」 結論が導き出されるまでの過程

↓  (理由・体験・具体例などを織り込む)

結論」 最初の結論を発展させてまとめる

 

大体400字を超えるくらいの長さの小論文ならば、本論の部分の段落は、複数にした方が分かりやすいでしょう。

 

「序論→本論→結論」もある

課題によっては、最初に結論を出すのが難しい場合もあります。

たとえば、「現代の〇〇の問題点をあげ、それが××に与える影響を、例をあげて書きなさい」のように、結論が一言では述べ尽くせないような場合です。

 

そういうときは、最初は結論ではなく「問題提起」から書き始めると良いでしょう。

「パターン」は万能ではありませんので、臨機応変に変えてください。

 

序論」(問題提起)

本論」(序論を受けて、結論へと向かう)

結論

という形です。

 

例題で練習

 

小論文は思いつきで書いてはいけません。

このことを肝に銘じてください!

 

与えられた題で、思いつくままに書き進める人がいます。

しかし、それでは、どこかで行き詰まってしまうのです。

おおよその設計図(あらすじ)」を作ってから、書き始めましょう。

 

課題が与えられていたら、まずは、課題をよく読んで、「何が求められているのか」、「どういう条件が出されているのか」を押えます。

次に、どういう道筋で書くか、短い文をいくつも使って、全体の流れを作ります。

 

この「短い文をいくつも使って」というところが、「コツ」です。

一つ一つの文を骨格として、それに肉付けをすれば、小論文ができるのです。

 

例題1 国際化+教育

ここで、例題で考えましょう。

 

例題1、「国際化が進む日本において、特に教育の分野で、今後、重要になると思われることを述べなさい」

 

大学の教育学部などで出されそうな問題ですね。

もしも、これが、あなたの入試で出されたら、どう書きますか?

 

押えるべきことは、

  • 尋ねられているのは「教育の分野」で重要になること。
  • それは、「国際化が進む日本」でのこと。

この2点から導き出されることは、何でしょうか。

 

今後、教育の分野で重要になることは、たくさんあるでしょう。

たとえば、環境教育職業教育貧困対策不登校の問題いじめの問題……など。

 

その中で、「国際化」と結びつけて論じることができることを考えます。

「国際化」

日本の中に外国籍の児童・生徒が増える

「日本語を理解できない児童・生徒への対応」

 

はい、ひとつ、思い浮かびました。

もっとないでしょうか?

頭を柔らかくして、考えましょう。

 

「国際化」

外国で働く日本人が増える

「外国語教育の充実」「帰国子女への対応」

 

「外国語教育の充実」というのは、英語などをしっかり勉強させよう、ということです。

なんだか当たり前過ぎますね。

 

でも、言葉だけではなくて、「『異文化』を理解できるようにする教育」へと発展させたら、「日本語を理解できない児童・生徒への対応」とも重なる部分がありそうです。

「帰国子女への対応」も、「『異文化』を理解できるようにする教育」と関連づけられそうです。

 

短い文で書いてみよう

考えてみましょう。

 

「国際化が進むと、外国の人が周囲に増えるし、外国で育って日本に帰ってきた子どもも多くなるなあ。と、いうことは、言葉の壁や、習慣の違いで悩む子どもが多くなるんだろうなあ。そういう子を排除してはダメだよなあ。」

 

「言葉は教えるべきだろうが、かといって、感じ方や考え方まで無理に日本人に同化させる必要もないだろう。文化の違う子どもも、学校全体で自然に受け入れることが重要だろうなあ」

 

「これからは、日本人も、ますます世界に出て行って仕事をする時代がやって来るだろう。その時に活躍できる人は、どういう人だろう? 自分と異なる文化を受け入れる素地を持つ人だろう」

 

「そのために教育ができることって何だろう?」

 

まだ、思いつきの段階です。

しかし、「材料」は、集まってきました。

 

論理の流れができたら、短い文で書いてみましょう。

それが小論文の大筋になります。

 

なお、【  】や(  )の中は、実際の小論文では書きません。

 

【結論】

国際化が進展する日本では、異文化に対する理解や、異なる文化を持つ人々と協調できる姿勢を身につけることが、重要である。

(ここは、国際化の進む時代に、教育はどういう役割を果たすべきか、という問題提起をしてもよい)

 

【本論】

今後、世界のあらゆる場において、国際的な交流が拡大する。

日本人も、異文化を持つ人々と自然に協力できなくてはならない。

地球環境問題、難民問題、食料問題などの世界的な問題を解決するためには国際協力が不可欠だからである。

外国語教育が、より必要になる。

国際化の波は、日本国内にも押し寄せる。

日本国内でも、ますます外国籍の方が増え、日本語を理解できない児童・生徒も増加する。

海外から帰国した子どもたちへの対応も必要になる。

外国籍の児童・生徒や、海外から帰国した子どもたちが、日本国内でのびのびと学習し、個性と能力を伸ばす手助けをするのも教育の役割である。

 

【結論】

異文化に対する理解と、異文化圏の人々への協調と尊敬を、一般の児童・生徒が持てるようにしなければならない。

異文化への理解は、異文化を背景に持つ子供たちのためだけでなく、他の児童・生徒にとっても、極めて重要なことである。

 

これが、小論文の骨組みになります。

問題用紙の端にでも、ざっと書いてみましょう。

 

丁寧に書く必要はありませんよ。

重要な言葉をポンポンと書いていけばいいのです。

言葉だけなら、それほど時間はかかりません。

 

でも、頭の中では「文」に変換できるようにしてください。

その文に肉付けをして、より具体的に書いていけばできあがります。

 

ただし、この段階で考え込んで時間を浪費すると、肝心の小論文を書く時間がなくなります。

対策としては、日頃から、本番と同じ時間・字数で小論文を書く練習を重ねて、時間の配分方法を身につけていくしかありません。

 

例題2 少子高齢化の問題

例題2 「少子高齢化が進む日本で、社会保障はどうあるべきか、日本の財政の問題点を明らかにしつつ述なさい」

 

  • 少子高齢化が進む日本で、社会保障はどうあるべきかが問われている
  • 日本の財政の問題点を明らかにしながら述べる

 

この問題が福祉系の大学の入試で出されたとすると、次のような失敗例が出てきます。

 

×「少子高齢化で、身寄りのいない高齢者が増える。そういう人のために、社会保障を充実させるべきだ。高齢者の幸せのために、私は、この大学で社会福祉を学びたい」

 

この問いでは、「志望動機」は問われていないのです。

問われているのは、社会保障のありようと、財政の問題点です。

 

問題が要求していることを、よく確認しましょう。

感情が先走ると、冷静さが失われがちです。

クールになりましょう。

 

短い文で書いてみよう

さて、例題を考えると、

 

「日本の財政の問題点って、何だろう? 少子高齢化……そうか、働ける人が減少するから、税収が増えないってことかな。でも、社会保障の費用は、増える一方だな。だって、高齢化が進むんだから」

 

「財政難なのに、社会保障費が増加する。じゃあ、どうすればいいんだ?」

 

【結論】

少子高齢化が進む日本では、今後、社会保障費を削減する方策を、考えなければいけないと思われる。

 

【本論】

日本では、少子高齢化が深刻である。

高齢化によって、社会保障費が増大している。(医療費や年金などへの支出)

1人の高齢者を支える現役世代の数が減っている。(「肩車型」と言われている)

日本の財政は赤字で、国の借金が累積している。

社会保障費を削減することを考える必要がある。(でないと、財政が破綻するかもしれない)

どうやって削減するか。

高齢者でも、所得の高い人には、相応の負担をしてもらう。

高額な薬品や治療は、費用対効果を考えて利用すべきだ。

しかし、子どもの数が増えるように子どもへの財政支出は多くすべきだ。(保育所を増やすなど)

生活に困っている高齢者対策も忘れてはいけない。(空き家を安く貸すなど)

消費増税もやむなし。(貧困対策とセット)

 

【結論】

限られた財源を効果的に使うために、社会保障費の見直しが必要だ。

一律に社会保障費を削減するのではなく、負担できるところには、負担を求め、使うべきところには使う、という選択をするべきだ。

早急な社会改革が求められている。

 

これは、自分用の「メモ」なので、文のつながりが緊密ではありませんし、思いついた文言を( )に自由に入れています。

 

このような「あらすじ」を作ってから書き始めると、いつの間にか、論理が変な方向に転がってしまった、ということがなくなります。

このあらすじに肉付けしていけば、筋の通った小論文ができます。

 

雑念は捨てよう!

深く考えていけば、「でも」「しかし」がいっぱい出てきます。

 

「でも、医療費を削減すると治療を断念せざるを得ない人が出るんじゃないか?」

「でも、保育所を増やして、子どもの数が増えるのか?」

「しかし、消費増税によって、景気が悪くなって税収が大きく減るかもしれない」

 

ごもっともです。

けれども、その疑問にいちいち答えていくと、本筋からそれてしまい、最後には、何について書いているのか分からない小論文になってしまいます。

 

根本的な問いへの答えと、明らかに起こると予想される疑問への反論は、簡単に、できる範囲でしておきましょう。

しかし、捨てるべきところ(重要でない疑問)は、捨てましょう。

目の前の小論文が、人を納得させるような一貫した論理を持っているなら、それでよし、としましょう。

 

そもそも、財政や社会保障費の問題に、誰もが納得する素晴らしい解決策など、あるのでしょうか。

もし、ちょっと考えただけで見事な解決策が見つかるのなら、国会は要りません。

 

でも、正直に「解決策はありません」「分かりません」と書いてはいけません。

正直すぎてはいけないのです。

 

正直に書くと「効果があるかわからないし、反対意見もあるだろうし、自分だって疑問を持っている部分もあるけど、こうするしかないんじゃないかな?」なのです。

 

それでも、割り切って「こうしてはどうだろうか」「こうすべきだ」と、はっきり書きましょう。

ズバリと書かないと、「迷い」が表われて、どこか自信のない文章になるのです。

 

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文章を書く時の注意点

 

文章を書く時に気をつけておきたいことを挙げます。

これは小論文だけでなく、論文や作文でも通用する注意点です。

 

文は短く

「文」とは、「句点(。)などで区切られた、ひとつのまとまりある内容を表すことばの集まり」です。

 

「これはペンです。」も、文です。

「丘の上に黒い雲がかかり、その雲の隙間から、夕日が枯れた草の上を照らしていた。」も、文です。

 

文が集まって「文章」になります。

 

ひとつの文を、だらだらと長くしてはいけません。

特に、作文の苦手な人が文を長くすると、主語と述語の対応がおかしくなったり、修飾関係が乱れたりします。

文は短く、すっきりとさせましょう。

 

主語と述語を対応させる

×「私の将来の夢は、漫画家になりたい」

「私の将来の夢は、漫画家になることだ」

「私は、漫画家になりたい」

 

「夢は」という主語に、「なりたい」という述語は対応しません。

主語と述語は、きちんと対応させましょう。

 

修飾関係を明らかにする

「母親は泣きながら逃げて行く息子を追いかけた。」

さて、この文で、泣いているのは誰ですか?

 

10人くらいに尋ねると、母親だと答える人も、息子だと答える人も、両方います。

そうです、この文は、どちらとも受け取れるのです。

 

上の文は、文を詳しくするための修飾語がどこにかかるか、あいまいです。

はっきりさせるには、読点(、)をつけて書くか、語順を入れ替える必要があります。

 

例えば、《母親が泣いている》場合は、

「母親は泣きながら、逃げて行く息子を追いかけた。」

または

「逃げて行く息子を母親は泣きながら追いかけた。」

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にします。

 

《息子が泣いている》のであれば、

「母親は、泣きながら逃げて行く息子を追いかけた。」

または

「泣きながら逃げて行く息子を母親は追いかけた。」

にします。

 

誤解を招かないためには、修飾する言葉とされる言葉をできるだけ接近させ、ひとかたまりで読んでもらえるようにしましょう。

他にも、意味がはっきりしない文はあります。

たとえば、下のような文です。

 

「私は、リンゴと同じように、ミカンは好きではない」

これは、

「リンゴは好きでなくて、同じように、ミカンも好きではない」(どちらも嫌い)

「リンゴは非常に好きだが、ミカンはそれほど好きではない」(どちらも好き)

と、見方によっては、逆の解釈ができる文です。

 

読めるように書く

大きめの字で、はっきりと、丁寧に、書いてください。

「読む人(=採点者)」がいることを忘れてはいけません。

 

いくら良い小論文を書いても、採点者が読めなくては、不合格です。

これは、普通のテストの解答でも同じです。

 

虫眼鏡で見ないと読めないような字を書く人がいます。

そういう人の小論文は、入試では、不公平がないようにするため、一応は採点者も読んでくれるでしょうが、就活の際の小論文でしたら、読んでもらえずに、落とされる可能性すらあります。

 

なぜなら、「こんな読みにくい字を書く人と一緒に働きたくない!」と思うからです。

就活の小論文の書き方のポイントは、「この人と一緒に働きたい」と思わせることです。

ですから、小論文の内容は、明るく元気で前向きなものが好まれますが、「字の読みやすさ」も、本当に大切です。

 

字が下手でも、丁寧に書いておけばよいのです。

字が下手なのは、仕方のないことですから。

でも、自分勝手な崩し字や、いわゆるギャル文字は、良い印象を与えません。

 

書き慣れよう

 

入試の小論文の場合は、過去問を集め、同じ字数、同じ制限時間で書く練習をしましょう。

 

書いたらそのままにせず、学校の先生にお願いして、添削してもらってください。

自分では気づかない誤字や脱字を指摘してもらえますし、採点者が、どういうところに注目するのかが分かります。

 

過去問を解き終わったら、同じ字数、同じ形式で新たに類似の問題を作り、また練習していきましょう。

学校の先生に作ってもらってもいいでしょうし、他の大学などで出された問題を自分の受ける試験の形式で答えてみてもいいでしょう。

 

引き出しを増やそう

 

小論文を書くためには、「自分の考え」が必要です。

その考えを作るための材料を、日頃の生活の中で集めて、自分の引き出しに入れておかなければなりません。

引き出しの数も、その中に入れる情報の量も、増やしていきましょう。

 

テレビは、ニュース番組やニュース解説を観て、新聞は、自分の志望する学部に関わりのある記事を中心に読みましょう。

たとえば、看護・医療系の学校や学部を志望している人は、医療に関係した記事を、保育系の学校や学部を志望している人は、保育・育児・教育関係の記事を、しっかりチェックすべきです。

 

このように、自分の受験しようとする学部に関係ある情報には、特に注意を払っておきましょう。

 

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まとめ

小論文を書く際に気をつけるべきことを箇条書きします。

 

  1. 与えられた課題・条件をよく理解して、それに沿って書くこと。
  2. 論理的に書くこと。客観的な内容にすること。
  3. ひとつの文は短くすること。
  4. 丁寧な字で、読みやすく書くこと。

 

苦手な人は、たくさん書いて練習し、慣れていきましょう。

小論文を書く力は、その後もいろいろなところで役立ちます。頑張りましょう。

 

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