大人の弱視とはどういった事を言うのでしょうか?

大人の弱視の原因、レーシック手術は効果があるのか、他にどういう治療法があるのかなどをまとめてみました。

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弱視とは

弱視とは、眼鏡やコンタクトレンズで矯正をしても視力があがらない目のことをいいます。

例え裸眼で視力が0.1以下だったとしても、眼鏡やコンタクトレンズで矯正して1.0以上の視力がでれば弱視とは呼びません。

また、視力以外にも見える範囲の狭い「視野狭窄」や、視野の中に見えない部分がある「暗点」などの症状が現れることもあります。

脳の機能が適切に発達しないと弱視になってしまう

人間は産まれたばかりの頃にはまだぼんやりとしか物を見ることができません。
物を見ることで徐々に脳が刺激されて見る力が備わり、6歳頃にはこの機能はほぼ完成すると言われています。
脳が発達する6歳頃までの大切な期間に、目のピントを合わせて物をハッキリと見るという事が、脳の見る力を鍛える為にとても大切です。

この期間に物をハッキリと見るという事が妨げられ、ピントの合った鮮明な映像が網膜に映されないと、細かい物をみるための脳の働く成長が鈍ってしまい、視神経が未発達の状態で止まってしまいます。
視神経が未発達だと、目そのものに異常がないのに、眼鏡などで矯正をしても視力があがらないということになってしまうのです。

弱視の原因は様々

弱視の原因① 斜視

弱視になる原因のひとつに斜視があります。
斜視とは、物を見る時に片方の目は目標物に向かって向いているのに、もう反対側の目は違う方向を向いていてしまう状態の事をいいます。

斜視があると見た目が悪いだけではなく、網膜の正しい位置で見ることができないため、物が二つに見えてしまったり、ずれた側の目で見える物がハッキリと見えないなどの理由から、無意識に見えにくい方の目を使わなくなり、視力が発達せずに弱視になります。

物が二重に見えることを「複視」と呼びます。
目が大きくずれている斜視の場合、片方の目の見え方を頭の中で都合よく消してしまう「抑制」という作用が働きますが、目のずれが少しだけの斜視の場合は、抑制がかからずに複視が発生して見えにくいという状態になる場合があります。

こうした斜視の治療は大人になってから始めても治すことはできますが、斜視が原因で弱視になってしまった場合には、目の位置を両目ともそろえる事はできても視力を回復する事はできないと言われ、両方の目で物を見るという事も難しいと言われています。

斜視の治療は、目の筋肉を操作して目の向きを変える手術をする事が基本と言われていますが、斜視の原因が目の筋肉の異常の場合は服薬での治療が有効な場合があります。

弱視の原因② 屈折異常弱視

産まれて間もない赤ちゃんはほとんどが遠視だと言われています。
遠くの物を見ても、近くの物を見てもピントが合わない遠視・近視・乱視などの強い屈折異常が起きて、目から入る映像が鮮明に脳に伝わらず、視力が十分に成長しなくなった状態を屈折異常弱視と呼びます。

屈折異常弱視は両目ともに強い屈折異常が起こるため、早期に発見される場合が多く治療も順調に進む場合があるので、視力の発達が固まってしまう8歳頃までに発見する事ができれば治療可能と言われています。

治療には眼鏡で屈折異常をしっかりと矯正する事が重要で、お風呂と寝る時以外は一日中かける必要があります。

弱視の原因③ 不同視弱視

両目に強い屈折異常が起こる屈折異常弱視とは違い、片方の目だけが弱視の状態を「不同視弱視」と呼びます。

不同視弱視の場合、片目は弱視ですがもう片方は普通に見えている為、ぼやけて見えにくい方の映像を都合よく消してしまう事で日常生活を送れてしまうので、発見が遅れてしまい、脳も片方だけの映像に慣れてしまいます。

こうした事から屈折異常弱視よりも発見が遅れてしまう場合が多く、気が付いた時には視力の発達が固まってしまっていたという場合もあるようですが、できるだけ早い段階で不同視弱視を発見する機会として3歳児検診があります。

不同視弱視の治療には見えにくい方の目で物をしっかりと見るための訓練をしていきます。

見えにくい方の目を矯正する為に眼鏡をかけるのですが、両目が開いた状態では見えやすい方の目だけを使ってしまう事になるので、見えやすい方の目を「アイパッチ」で隠して見えにくい目を強制的に使う訓練をします。

一日のうちでアイパッチを使用する時間や、訓練の期間は弱視の程度によって変わってくるようですが、見えるようになったからとアイパッチを辞めてしまうとせっかく上がってきた視力がまた下がってしまう事もあるようです。

この他に点眼薬を使用する場合もあるようです。

弱視の原因④視性刺激遮断弱視

先天性白内障や幼児期に片目に眼帯をしていたなどの理由や、生まれつきまぶたが垂れさがっていてうまく目を開ける事ができないといったことから、長い期間目に光や映像などの刺激が入らなかった場合、使われなかった方の目の成長が妨げられて弱視になる事があります。

網膜の中心で物を見ているか、網膜に異常がないか、屈折異常がないか等、細かく検査をして原因をはっきりさせ治療を始めることが重要になってきます。
目そのものに問題はなくても、脳の機能が適切に発達しない事が原因で弱視になってしまった場合、遅くとも8歳くらいまでに治療を開始しないと思うような結果が出ないと言われています。

治療は眼鏡を使って屈折矯正をするという方法があります。
眼鏡で矯正をして脳に正常の映像を送ることで、視力の機能改善を期待する事ができます。

また、良く見える方の目をアイパッチで覆い、弱視の目を使い強制的に物を見る訓練をするという方法もあります。

視性刺激遮断弱視の治療は、弱視の方の目をしっかりと使うという事が基本になり、3歳頃までに治療を開始することが大切になってきます。

ロービジョンとは?弱視とは違うのか?

「ロービジョン」という言葉をご存じでしょうか?

ロービジョンとは「失明はしていないが、視力が非常に低い状態」の事を指し、視力を矯正した状態で0.02~0.3程度の事を指しますが、ハッキリ線引きが出来ている訳ではありません。

このように眼鏡やコンタクトで視力矯正をしても視力が低いために物が見えにくく、日常生活を送ることが困難な状態の事をロービジョンと呼びます。

また、視力が悪くなくても、暗い場所に行った時に目が慣れずに見えにくいままの状態が続く夜盲症や鳥目と言われる症状、視野欠損などで日常生活に不自由がある場合にもロービジョンと呼ばれます。

一方「弱視」は本来、子供の頃に目そのものに異常がなくても視神経の発達が途中で止まってしまい、物を見る力が十分に備わっていない場合に限定して使用されていた医学用語ですが、文字のイメージから「視力が悪い状態の事=弱視」として認識される事が増えてきて「ロービジョン(弱視)」という言葉を使って区別をするようになってきました。

また、症状や物を見ることの困難さの程度には個人差があり、同じ弱視の方でも見え方はそれぞれ違ってきます。

視覚障害には「弱視」と「失明」の二つに分類されますが、この基準も様々と言われています。

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ロービジョンと呼ばれる弱視の原因と治療方法

では、大人の場合どういった事が原因で「ロービジョン」と呼ばれるような状態になってしまうのでしょうか。

大人の弱視(ロービジョン)の原因① 緑内障

緑内障は、眼圧が高まって視力低下、視野欠損の他、最悪の場合失明してしまう病気で、日本人の中途失明原因の第一位と言われています。

私たちの目は「房水(ぼうすい)」と呼ばれる水によって一定の圧力で形を保っています。
この圧力のことを「眼圧」と呼び、眼圧が高い状態が続いてしまうと視神経を圧迫してしまい緑内障の原因になると言われています。

房水の排出される場所が目詰まりを起こして流れが悪くなる原発緑内障や、目の発育以上が原因で生まれつき眼圧が高い発達緑内障などがあります。

緑内障は片目ずつ発症する場合が多く、片方が見えにくくても、もう片方は見えているので発見が遅れてしまうことが多いです。
一度発症すると完治はないとされ、病気の進行を食い止めることが目標になるので早期発見がとても大切です。

大人の弱視(ロービジョン)の原因② 糖尿病性網膜症

糖尿病が原因で網膜が障害をうけて視力が低下してしまう病気です。

糖尿病は血液中の糖分を細胞がうまく吸収する事ができなくなり、血液中の糖分が多いままの状態が続くと糖分が血管に障害を与えるようになってしまいます。

網膜の血管は細いために血管の障害を受けやすく、血管の詰まりや出血したりするようになります。
血管が詰まったり、出血したりなどで機能しなくなると栄養分が届けられないので、新しい血管を作り栄養を届けようとするのですが、新しい血管はもろいので、ここでもまた出血をしたり成分が漏れてしまったりというような状態を起こしてしまいます。

こうした事が視力低下や視界がかすんで見えるなどの症状となって現れます。
早期発見、早期治療で病気の進行を抑えることができますが、放置すると失明の可能性があり、日本の中途失明の代表的な原因になっている病気です。

糖尿病性網膜症の初期の段階は自覚症状はありませんが、網膜の血管の状態を調べてみると小さな出血があるなどの異常が見つかります。

その後、視界がかすんで見えるなどの中期の症状が現れ、末期の段階では視力低下や飛蚊症、網膜剥離や緑内障など他の病気を併発する場合があり、失明してしまう場合もあります。

治療は糖尿病と同様に血液中の糖分量をコントロールする事が大切で、この他にも新しい血管の発生を防ぐレーザー治療や、レーザーで改善が見られなかった場合には手術をする場合があります。

大人の弱視(ロービジョン)の原因③ 加齢黄斑変性

比較的男性に多いとされる病気で、加齢により網膜に障害が生じ、中心にあるものがゆがんで見えたり、見えない部分が現れる病気です。

加齢黄斑変性には、加齢により網膜の細胞の働きが低下して目の中に老廃物が溜まりやすくなると、目に栄養がきちんと届かなくなり、網膜色素上皮が少しずつ萎縮してしまう「萎縮型」と呼ばれる病気の進行がゆっくりなタイプと、急激な視力低下や出血を起こす「滲出型(しんしゅつがた)」と呼ばれる病気の進行が早いタイプがあります。

最近になって新しい治療法が開発されてきていますが、ほとんどが視力の維持を目的としており、現段階では視力が元通りになる事はないと言われています。

そのため、早期発見・早期治療がとても重要で、少しでも目に違和感を感じた場合には早めに眼科を受診することが大切です。

大人の弱視(ロービジョン)の原因④ 網膜剥離

眼球の内側にある網膜が剥がれて視力が低下してしまう病気で、進行すると一気に視力が低下し、失明の危険性もあります。

ボールが目に当たったなどの、外側からの強い衝撃が加わると網膜剥離になる可能性の他にも、加齢や糖尿病性網膜症など病気がきっかけで起こる場合もあります。

網膜に小さな裂け目ができてしまう「網膜裂孔」の段階で発見された場合、裂け目をレーザーで焼き付ける方法で治療する事ができますが、網膜が剥がれてしまった「網膜剥離」の場合は進行具合によっては手術を行う場合があります。

網膜剥離は治療が早ければ早いほど視力への影響が少ないと言われているので、気になる症状がある場合には早めに眼科を受診する事が大切です。

大人の弱視(ロービジョン)の原因⑤ 網膜色素変性症

目の中で光を感じる網膜に異常がみられる遺伝性の病気です。
視力が低下する、視野が狭くなる、夜盲症などの症状があります。

網膜色素変性症はほとんどが遺伝による発病と言われていますが、親が網膜色素変性症だからと言ってその子供が必ず発病するわけではありません。

また、網膜色素変性症の方は白内障や緑内障を併発しやすいと言われているので、網膜色素変性症と診断された場合には定期健診を受けるなどして自分の目の状態を知るという事が大切になってきます。

現段階では具体的な治療はなく、視力の維持を目的として内服薬が処方される場合があります。

眩しすぎる光は目に大きな負担を与えてしまうので、網膜色素変性症と診断された場合にはサングラスを使用する事で病気の進行を遅らせる効果が期待できると言われています。

職業選択やスポーツをする際には、屋内でできることを選ぶ工夫も必要になってきます。

大人の弱視(ロービジョン)の場合レーシック手術で視力回復を期待できるのか?

目の手術というとレーシック手術を思い浮かべる方もいると思います。

レーシック手術は、レーザーを角膜に照射して屈折力を矯正をする事で、目のピントを合わせ物を見やすくする手術の事をいいます。

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手術をしてピントが合うようになっても、脳が映像を判断できなければ正常に物を見ることはできません。
脳の神経回路が未発達なことが原因の弱視は物を見るという力がついていない為、残念ながらレーシックで視力を回復するという事は期待できません。

また、緑内障・糖尿病性網膜症・加齢黄斑変性・網膜剥離の場合は、眼圧測定が正確にできないなどの理由からレーシック手術はできないと言われています。

こういった事から大人の弱視の場合、大切なことは現在の視力をこれ以上低下させないということです。
そのために、自分の目に合った眼鏡を使用し、定期的な検査が必要になってきます。

大人の弱視の治療法 ロービジョンケア

ロービジョンと呼ばれる大人の弱視の場合、ロービジョンケアという方法で日常生活をおくる為の工夫をします。

拡大鏡


手持ち型や、卓上型などの拡大鏡を使って、レンズによる拡大を利用して物を見やすくする方法があります。

単眼鏡

30cm程度からある程度距離の物まで拡大する機能があるので、黒板や電光掲示板などを見る為に使います。

遮光眼鏡

まぶしくて物が見えにくいという人は、まぶしさの原因となる波長の長い光をカットする眼鏡を使用する場合があります。

大人の弱視 脳の機能の発達が原因のものに治療方法はないの?

大人の場合、脳の機能が低下したことが原因で引き起こされる弱視は治療をしても改善が難しいと書きましたが、全く可能性がないとは言えないようです。

カナダはモントリオールのマギル大学とマギル大学医療センター研究所(RI-MUHC)の研究者らが、世界的パズルゲーム『テトリス』にて成人の弱視(amblyopia、またはlazy eye)を治療できる可能性があると発表しました。(中略)「現状では成人の視力を回復させる方法は存在しないが、手がかりとなるのは二つの目を同時に特定のタスクを動かすコンディションにすることだ」としています。また、成人の脳は有意な可塑性を持ちあわせており、それは幼年期に受けた問題で失われた視力を取り戻すための土台となりうると強調しました。(中略)9名を正常な目にアイパッチをあてて弱視の目でゲームをプレイさせました(“monocularly”)。残る9名には同じゲームを両目でプレイさせました(“dichoptically”)。2週間後、両目でゲームをプレイしたグループには三次元的な知覚において劇的な改善がみられました。また、わずかな改善しかみられなかったmonocularly群も、両目でのトレーニングにスイッチしたところ、同様の効果があったとのこと。

子供の弱視の治療ではアイパッチを使い良く見える方を隠して見えにくい方の目を使う訓練をしますが、大人の弱視治療の場合は両目を使って集中して物を見る訓練をすることで改善する可能性があるようです。

今後さらに研究が進めば、大人の弱視でも「物を見る力」が回復する可能性が出てくるのかもしれません。

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まとめ


大人の弱視には様々な原因があり、見え方も人によって違います。

ロービジョンの方は、今の視力を低下させないという事が何よりも大切になってきます。

定期的に病院での検査を受けて、自分の目に合った眼鏡を使うなどの対策をとるようにしましょう。

他にも気になる目の症状があればこちらもどうぞ。

 


 

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