歯ぎしりは、自分では分からないものです。

「ギリギリギリ……」近くで寝ている家族が、歯ぎしりの音を立てていたら、うるさいなあとも思いますが、同時に、こんなに音を立てて、歯は大丈夫かなと心配になります。
翌朝、歯ぎしりのことをいっても、「そんなことはないよ」と本人は気にしていない様子。
いったい、歯ぎしりの原因は何なのでしょうか。どんな対策をとればいいのでしょうか。

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歯ぎしりの3つの種類

歯ぎしり(歯軋り)とは、歯をこすり合わせる癖のこと。特に睡眠中に歯ぎしりをしてしまいがちです。

3つの種類

歯ぎしりには次の3つの種類があります。

グラインディング(grinding)

歯をこすり合わせるタイプの歯ぎしり。ギリギリと音を立てて上下の歯をかみ合わせます。普通、歯ぎしりというと、このタイプを指します。

クレンチング(clenching)

歯をかみしめるタイプの歯ぎしり。音は立てずに、ぎゅっと歯を食いしばりますから、周囲の人は気づかないこともあります。

タッピング(tapping)

歯をカチカチと鳴らすタイプの歯ぎしり。上下のあごを小刻みに動かして、歯で音を立てます。
このタイプの人は、あまり多くはありません。

歯ぎしりの原因

ストレス

歯ぎしりの最大の原因は、ストレスです。
人間は、日中にさまざまなストレスを受けます。そのストレスを発散できずにため込んでしまうと、歯ぎしりをして、ストレスを発散しようとするのです。
歯ぎしりをすることが、ストレス発散の方法になってしまうことがあるのです。

アルコール・ニコチンなど

ストレスというと、精神的なストレスを思い浮かべることが多いですが、アルコール・ニコチン・カフェインなども人体には、ストレスなのです。過度の飲酒や喫煙が歯ぎしりの原因になることもあります。
アルコールやカフェインは眠りを浅くして、そのため歯ぎしりをしていることもあります。

治療中の歯の不具合

歯が治療中で、詰め物が歯に合っていないときや、歯を抜いてそのままになっているときは、あごの筋肉がアンバランスな緊張状態にあります。その筋肉の違和感から歯ぎしりを起こします。

他の病気の影響

他の病気が原因で、歯ぎしりをすることもあります。
たとえば「逆流性食道炎」の患者が、治療を進めると、歯ぎしりをすることが減るということがあって、この病気と歯ぎしりとの関連性が指摘されています。胸焼けのある人、胃のあたりによく不快感を持つ人は、逆流性食道炎の治療をしてみてはいかがでしょうか。
また、「睡眠時無呼吸症候群」の人の場合、歯ぎしりの後、無呼吸状態になることがあります。いびきや歯ぎしりがあり、昼間に強い眠気に襲われて困っている人は、早めに病院を受診してみませんか。

かみ合わせの悪さ

かみ合わせや歯並びが悪いと歯ぎしりをすると言われてきましたが、現在では、これには根拠はないとされています。

かみしめる癖

口を閉じて普通にしているとき、歯は、上の歯と下の歯の間に2~3mmのスキマがあるのが正しいのです。
この状態のとき、咀嚼筋(そしゃくきん)は、安静状態にあります。

しかし、いつも歯に力が入っていて、上下の歯を接触させる癖を持っている人もいます。この癖を「歯列接触癖(Tooth Contacting Habit 略してTCH)」といいます。
ギュッとかみしめていなくて、上下の歯が接触しているだけの状態でも、筋肉やあご関節に緊張が生じています。
持続的に上下の歯を接触させていると、筋肉の緊張が残っていて、眠っているときに歯ぎしりをしてしまいます。

いつもは上下の歯を接触させていなくても、パソコンや好きなゲームや仕事などに熱中しているときは、上下の歯を合わせて力を入れてしまう人は多くいます。気づいたときにあごの力を抜くようにしましょう。
パソコンの周囲に「力を入れない」などと書いて貼っておくのも良い方法です。

子どもの場合

子ども(乳児・幼児・小学生)の歯ぎしりは、あまり心配する必要はありません。成長にともなって出てくる一時的なものだからです。
乳児は、歯の生え始めや、奥歯が生えるころに歯ぎしりをします。あごの筋肉を動かし、かみ合わせを調整していると考えられます。幼児や小学生は、あごの骨が成長し、歯が抜け替わるときのかみ合わせの違和感を、歯ぎしりで調整しています。永久歯が生えそろうと、歯ぎしりもおさまっていきます。
ただし、歯ぎしりをして歯やあごを痛がる場合は、歯やあごの関節の異常が原因のこともありますので、歯科医で相談することをおすすめします。
また、中学生や高校生の場合は、ストレスが原因のこともありますので、少し注意深く見守ってあげましょう。

子どもの歯ぎしりについては、こちらの記事をどうぞ。
記事「子どもの歯ぎしりの原因は?心配はないの?」

高齢者の場合

高齢者の場合、認知症や睡眠障害が原因になることもあります。
高齢者が歯ぎしりをしていたら、認知機能の衰えや、睡眠の状態について気をつけてあげましょう。
歯は、健康な生活のためにとても重要です。高齢者はもともと歯が少なくなったり、歯茎が弱ったりしている人が多いですから、歯ぎしりの悪影響を、強く受けてしまいます。ひどい歯ぎしりは早めに治療しておきたいですね。

歯ぎしりの影響

ギリギリという音は、いかにも、体に悪そうですが、実際のところ、どうなのでしょうか。

歯を傷める

歯と歯をこすり合わせるので、歯が削られます。また、歯にひびが入ったり欠けたりすることもあります。
歯の表面が削れたり割れたりすると、歯の象牙質や神経がむきだしになり知覚過敏を生じて、冷たいものがしみるようになります。
歯茎にも必要以上の力がかかることによって、炎症をおこし、歯周病がひどくなるケースもあります。

顎関節症

歯ぎしりは、歯だけでなく、あごにも悪い影響を与えます。
歯ぎしりで強い力を受けていると、あごの関節がダメージを受けて、顎関節症(がくかんせつしょう)にかかることがあります。
顎関節症にかかると、口が開きにくくなったり、あごを動かすと音がしたりします。

 

歯ぎしりの治療

歯ぎしりは「睡眠時ブラキシズム」というれっきとした病気です。歯ぎしりの治療って、どうすればいいのでしょうか?

自分でできる改善方法

TCHをやめる

上下の歯を接触させる癖が、TCH(歯列接触癖)です。普段、起きているときや、何かに夢中になっているときに、無意識で上下の歯を重ねてしまう人や、歯をかみしめてしまう癖がある人は、意識して止めるようにしましょう。

生活習慣

あまり枕を高くしない、過度の飲酒や喫煙を避ける、片方の歯で噛まず両方を均等に使う、ストレスをためない、上向きでリラックスして寝るなどの、習慣の見直しも効果があります。

マウスピース

ドラッグストアでも、歯ぎしり用のマウスピースを売っています。
樹脂をお湯に入れて柔らかくして、自分自身で歯型を取って使います。ただし、自分で作るのですから、本当にうまくできたか、これでいいのか、という不安も残ります。
また、歯全体を覆うのではなく、奥歯に噛ませて歯ぎしりの力を吸収するタイプのものもあります。

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歯科医院での治療

マウスピース療法

歯科医院での治療の中心は、マウスピース(ナイトガード)を使ったものです。
歯やあごへの悪影響をなくすために、マウスピースを、寝るときに装着するのです。歯科医院や口腔外科では、自分に合わせたマウスピースを作ってくれます。マウスピースは保険が適用されますので、5,000円~7,000円くらいの自己負担で作ることができます。
マウスピースをつけたからと言って、歯ぎしりをしなくなるわけではありません。しかし、歯や歯茎に及ぼす力をマウスピースが吸収して歯をガードする働きがありますので、歯への悪影響は少なくなります。

マウスピースのお手入れなどについては、こちらをどうぞ。

記事「歯ぎしりの治し方はマウスピースがいい?どんな効果があるの?」

薬物療法

筋肉の緊張を緩和する薬品を使うことがあります。痛みや炎症が出ている場合は、それに応じた薬品で鎮めます。眠りを深くして歯ぎしりを減らすために、入眠剤を処方する場合もあります。

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まとめ

歯ぎしりの一番の大きな原因はストレスです。しかし、歯を食いしばる癖や、治療中の歯の不具合も影響を及ぼします。逆流性食道炎や睡眠時無呼吸症候群といった病気が原因になっていることもあるので、注意が必要です。

歯ぎしりによって歯やあごが受けるダメージが心配な人は、歯科で診察を受けましょう。マウスピースを使うことで、悪影響を少なくできます。

 


 

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