アトピー性皮膚炎に苦しめられ、悩んでいる方にとって、かきむしりたくなるような「かゆみ」とともに、深刻なのは肌が黒ずんでしまう「色素沈着」です。この色素沈着とは、肌が炎症を起こすことによって、メラニン色素が活性化されて生じるもので、肌の炎症が起こりやすくなってしまうアトピー性皮膚炎では、この「色素沈着」による悩みを抱えている方が多くいらっしゃいます。アトピー性皮膚炎は、症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返してしまうため、根気強く向き合う気持ちが必要になりますが、この「色素沈着」も適切な処置と体質改善などを続けていくことで、改善していきます。ここでは、アトピー性皮膚炎の色素沈着の原因と、実際に効果があった予防法や治し方などについて紹介していきます。
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アトピー性皮膚炎の色素沈着は「日焼けと同じ」メカニズムで発生
アトピー性皮膚炎で色素沈着が起きてしまう原因は、日焼けで肌が黒くなるのと同じメカニズムで発生します。肌の黒ずみを起こすのは、「メラニン」という色素で、メラニンは肌の表面にある「表皮」の一番底にある「基底層」に分散している「メラノソーム」という細胞で生成されます。このメラニンは、皮膚が紫外線や炎症などを起こしてダメージを受けると生成が活性化されてしまいます。日焼けや黒ずみは、この「メラニン」がメラノソームから周囲の「表皮ケラチノサイト」に受け渡されて、肌が黒く見える状態になったものです。通常、このメラニンは、表皮側に受け渡されて、徐々に表面に上がって、はがれ落ちるサイクル「ターンオーバー」という新陳代謝を繰り返すことではがれ落ちていきます。だから、日焼けも黒ずみも、時間の経過ととともに、大半は元の色に戻っていきます。しかし、強い炎症などで、基底層が崩れた場合に、メラニンは表皮側ではなく、肌の奥の「真皮」側に取り込まれることがあります。真皮は表層と違いターンオーバーの期間が長いため、何年もシミのように黒ずみが残る場合があります。
かゆさが招いてしまう「負のサイクル」
それでは、どうして、アトピー性皮膚炎では色素沈着が起こりやすいのでしょうか。それは、アトピー性皮膚炎の症状が大きく起因しています。アトピー性皮膚炎は、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドラインが「増悪(ぞうあく)・寛解(かんかい)を繰り返す、瘙痒(そうよう)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因 を持つ」と定義しているように、かゆくて、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。この強いかゆみがあるために、皮膚をかいてしまうことで、皮膚の炎症を起こし、さらに、症状が進むとジュクジュクとした湿疹が発生してしまい、かゆみも増してしまうという「負のサイクル」に陥ってしまいやすいからです。
かゆみの原因は肌の「バリア機能」の低下
このかゆみの原因は、肌の「バリア機能」が低下して、かゆみを感じる知覚神経が敏感になることによって発生します。アトピー性皮膚炎の肌では、体内にさまざまな刺激や細菌などが入ってこないように守ったり、体の内側から体液がもれないように守ったりする表皮の最も外側にある「角層」のバリア機能が、健康な皮膚と比べて低下してしまいます。そのため、細胞と細胞の間を埋めている角質細胞間脂質や、水分をとらえて放さない天然保湿因子が減少し、体の内側からは水分が蒸発しやすく、外側からは本来なら体の中に入ってきてほしくない「抗原刺激」が入ってきやすい状態になっています。そして、その抗原刺激が「何かが入ってきた」と集まってきた免疫細胞と結びつき、アレルギー性の炎症を起こす物質を作り、アトピー性皮膚炎の炎症を引き起こしてしいます。さらに、バリア機能が低下していると、かゆみを感じる知覚神経が表皮まで伸びてきて、ちょっとした刺激でもかゆみを感じやすくなり、かいてしまうことで、さらにバリア機能が悪化するという悪循環に陥ってしまうことにつながってしまいます。
「バリア機能」を回復して色素沈着を防ごう!
つまり、アトピー性皮膚炎が元でできてしまう色素沈着は、炎症の悪化によって生じるもので、この色素沈着を予防したり、治したりするためには、アトピー性皮膚炎で低下した肌の「バリア機能」を回復して、その状態を維持していくことによって、防いだり、改善していくことができるのです。そうは言っても、アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返すため精神的にもつらく、小さなお子さんの場合には、注意したとしても、どうしてもカラダをかいてしまうこともあります。その原因も、ダニやほこり、気候、食事、体質、ストレス、ペット、細菌感染、大気汚染、室内環境など様々な要因によって引き起こされる「多因子性の疾患」とされるように、ひとによって、その要因も症状も異なるので、何をどのようにしていったら良いのか、戸惑ってしまうこともあると思います。それでも、しっかりと病気に向き合い、あきらめずに、ひとつひとつ取り組んでいくことが、健康な肌を取り戻し、色素沈着を改善していくことにつながっていきます。ここでは、国立成育医療研究センターが推奨しているアトピー性皮膚炎の「治療の3つの柱」の「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子への対策(多因子対策)」を中心に、色素沈着を改善した方の体験も合わせて紹介していきたいと思います。
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最初のステップは「薬物療法」でバリア機能を応急的に回復させること
「肌がかゆい」「なんだかカサカサしている」「湿疹が出てしまった」「なかなか症状が治まらない」という場合は、まずは、皮膚科などの専門医を受診しましょう。どうしてかというと、その症状が何なのかを知るとともに、先に説明したように、それが、アトピー性皮膚炎だった場合、肌のバリア機能が低下し、抗原刺激が体内に入ってきやすく、ちょっとした刺激でもかゆみを感じてしまう状態を、まずは応急的に食い止める必要があるからです。肌の炎症を食い止めるための応急的な処置として必要なのが「薬物療法」です。アトピー性皮膚炎の薬物療法には、ステロイド外用剤やタクロリムス軟膏などの外用剤に、内服薬の服用も症状に合わせて併用されます。ステロイド外用剤は、副作用の影響が強い内服薬に代わって処方されるもので、炎症をおさえて肌をきれいにする効果があります。これで、一旦、肌をきれいにして「バリア機能」を一時的に回復させた後、徐々に薬を減らしながら、薬を使わないスキンケアへと移行し、環境の改善や体質改善などと合わせて「バリア機能」を維持していくことが、アトピー性皮膚炎の治療の流れとなります。ステロイド外用剤は、症状や部位によっても薬の強さを変える必要があり、完全に炎症が治まるまで、しっかりと塗り続ける必要があります。そのためにも、専門医の指示を受ける必要があるので、まずは、「何かおかしいな」と思ったら、専門医を受診するのが一番です。
アトピーの基本治療は2点だけ。「十分な保湿と適切なレベルのステロイド」
1年間で500人のアトピー患者を診ているという小児科の医師の方は「アトピーの基本治療はたった2点。十分な保湿と適切なレベルのステロイド。そして、治療を成功させるコツは継続した診療ができること」と断言しています。難しいことはありませんね。とにかく根気強く、専門医の診断を仰ぎながら治療を続けていくことが、アトピー性皮膚炎を治す一番の近道です。また、色素沈着に関しても、症状が重かった方でも「色素沈着はトランサミンを一日3回内服して薄くして、3年以上かかりましたが、今はほとんど目立ちません」というよう方がいらっしゃるように、シミの原因物質を抑制する効果を持つトランサミンを服用することで色素沈着を改善した方も多くいらっしゃいます。そうです、迷わずに専門医の診断を仰ぎましょう。
(参照:アトピー性皮膚炎の治し方。年間500人診療して気づいた12の治療法。)
刺激に負けない皮膚になるために欠かせない「洗浄と保湿」
アトピー性皮膚炎の治療は、①薬物療法で炎症を治める②ステロイド外用剤等の使用頻度を少なくしながら保湿剤などのスキンケアで炎症を抑えられるようにする③薬物療法を完全に止めた上で、保湿剤や洗浄によるスキンケアで良い肌の状態を保っていくというふうに、ステップを踏んで移行していきます。薬物療法からスキンケアで健康の肌を維持できるようになるのが、最終的なゴールとなります。どうして、スキンケアが大切なのかというと、それは、皮膚のバリアを傷つける刺激を減らして、刺激に負けないバリア機能を備えた皮膚に戻すために、洗浄と保湿が欠かせないからです。
カラダを洗い流して「黄色ブドウ球菌」を減らそう
皮膚には汗やホコリ、カビなどが付いていて、それらがすべて刺激となりますが、とりわけ、「黄色ブドウ球菌」から出る「スーパー抗原毒素」が、アトピー性皮膚炎をひどく悪化させます。健康な皮膚には殺菌作用があって、「黄色ブドウ球菌」もほとんどいませんが、殺菌力の弱いアトピー性皮膚炎の皮膚には、大量の「黄色ブドウ球菌」が見つかります。そのため、一日に何度もカラダを洗い流すことは、「黄色ブドウ球菌」を肌から減らすためにも重要で、ステロイド外用剤の使用を抑えることにもつながるほど重要です。カラダを洗う際には、石鹸を十分に泡立て、ファンデーションを洗い落とすように、ジュクジュクしている箇所も含めて全身を手で優しく指の腹でもむように洗い、洗った後には、早めに保湿剤を塗って肌の乾燥を防ぐようにしましょう。石鹸は肌への刺激が少ない無添加のものを使用している方も多く、香料、着色料、エデト酸塩(EDTA-4Na)などの酸化防止剤、合成界面活性剤を使用していない無添加石けんの「シャボン玉石けん」をお勧めする方が多いようです。保湿剤は病院から処方してもらうこともできますが、市販の製品を購入する場合は、化粧水やボディークリーム等で自分の肌に合ったものを選ぶことになりますが、石けんと同じように、無添加の製品を選んだ方が肌への刺激は少なくなります。
なるべく肌に刺激の少ない環境を整えよう!
最後に「悪化因子の対策」ですが、悪化因子は先に紹介したように、ダニやほこり、気候、食事、体質、ストレス、ペット、細菌感染、大気汚染、室内環境など様々な要因が絡み合っています。こちらも、専門医のアドバイスに従って対応していただくことが最も大切なことです。ダニやほこりの対策としては、畳やじゅんたん敷きをフローリングに変えたり、衣類では、肌に刺激のある化学繊維の素材のものではなく、綿100%の下着などを使用されたりする方が多いようです。また、紫外線も肌への刺激となるため、なるべく日陰を通るようにしたり、肌への刺激が少ない日焼け止めを塗ったりするのも効果的です。ただし、日焼け止めを選ぶ際には、肌への影響が比較的少ない「紫外線錯乱剤」によって紫外線をカットするファンデーションを使うようにすることが必要で、肌を酸化させてしまうナノ化された製品は選ばないことが大切です。一般の製品では、合成の紫外線吸収剤未使用で天然由来成分100%の成分で作られているアロベビーの「UV&アウトドアミスト」が、安全な成分で虫よけと紫外線対策を一度に行えることもあって人気になっています。
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自分や子どもにあった環境を作ってあげよう!
インターネットなどを閲覧すると、アトピー性皮膚炎そのものや、アトピー性皮膚炎から生じた色素沈着に効果があると説明する商品などを数多く目にしますが、その商品を使うことだけによって、アトピー性皮膚炎が治ることは、ほぼ、ありません。専門医による適切な治療とスキンケアを柱に、自分やお子様に合った環境を作っていくことが、健康な肌を取り戻すことに必ずつながります。