夏休みに読書感想文が宿題として出されて、何をどう書けばよいか迷っている子供に、親は何を教える事ができるでしょうか。
自分の昔を振り返っても、そんなにうまく書けた記憶がなかったとしたら、自分もできなかったのに子供にどのように教えれば良いかもわかりませんよね(苦笑)
ネットなどで参考になりそうなページをたくさん調べていらっしゃる方もいるのではないでしょうか?
そんな方のために、特に小学生高学年の子供にどのように書き方を教えれば良いのか、ひとつの事例をご紹介します。
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※読書感想文の書き方を子供に上手に教えるには?【小学生低学年編】
※読書感想文の書き出し方 誰でもすんなり書ける方法【中学生編】
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Contents
本を読ませるコツ・どうやったら読むかを考える
読書感想文は、本を読まないことには、何も始まりません。
本が好きで読むことが苦でない子なら、放っておいても読んでくれると思いますが、イマイチ読むことが苦手な子なら、何かしらのテクニックを使って本への興味を引き出すようにしなければいけません。
小学生高学年はどんな時なのかを知っておこう
小学生高学年は、物事を理論的に考えた上で自分の意見を言えるようになる時期です。
低学年の頃よりも、深く物事をとらえて考えることができますが、一方で、深くなりすぎて偏って見える場合もあります。
育ちの早い子ならば、中学生くらいに訪れる、反抗期の入り口にも差し掛かってくるころです。
そういう多感な時期に突入しかけているのですから、無理強いや、押しつけをしたら逆効果!になることは想像できますよね。
それでも、ほんの少し手本を示す事ができて、それが有効だと本人が納得できれば素直に感激してくれる年ごろでもあります。
本を自発的に読んでもらうテクニック
本を読ませてどのように思ったのかを聞く前に、まずはその子の興味や関心がどこにあるのかを把握してみましょう。
そこから、どの種類の本なら楽しめるのか、感想が書きやすいのかを想像します。
一緒に図書館や本屋さんに行って、自分の好きな本を選ばせるのも一つの手段です。
自分で選んだ本なら、書く気もわいてきます。
課題図書が出されていて、どうしてもこの本を読まなければいけないときは、内容がわからなければ、まずは親が読んでみるのもいい方法です。
子供は、大なり小なり親のすることに興味がありますから、どんな話を読んでいるのか、気になってきます。
そこで、「これは面白かったからぜひ読んでみて!」と言ってしまうと実は逆効果!押しつけられたように感じてしまうのです。
コツとしては、親はただ「これってすごいね。」とつぶやくだけにしてみましょう。
「何がすごいの?」と聞かれても、「うーん、うまく説明できない。読んだ人にだけわかるようになってるみたいだよ。」とすこしもったいぶってみると、きっと本を開いてみたくなることでしょう。
心に残った所へ付箋を貼らせよう
感想文向けの本や課題図書は、少しだけレベルが高かったり、内容が込み入っている場合があります。
一通りさらっと読むだけでは、誰でも、なかなか感想文に起こすほどの内容を覚えていないものですので、読みながら、心に残った部分に付箋を付けるように子供にすすめてあげましょう。
「どうして?」「自分とは違う」「自分と同じ」「すごいな」と思った部分などに付箋を貼らせていきます。
一か所でもかまいませんし、いくつかあったのであれば、あっただけ貼ってしまってかまいません。
要は、後で思い出す時に、すぐにページを開けられるようにするために貼ります。
「付箋を貼ると感想文を書くのがものすごく楽になるんだよ」という感じで伝えると、「なるほどな、やってみようかな」と思うはずです。
付箋を貼りながら読んでいるなら、「頑張ってるね」とほめてあげましょう。
でも子供は夢中になると、付箋を貼ることなど忘れてしまいます。
貼らないで読み進めていても、怒らないでください。
まずは本を読むことが大事です。
付箋を貼ったのは、どうして?と尋ねる
付箋を貼ったのはいいけれど、子供がそれから先に進めずに困っていたら、「この付箋は、どうして貼ったの?」と尋ねてみましょう。
素直に「これは、この主人公が、本当はとてもいい人だったからだよ」「ここで、なぜこうなったのかわからないから」などと答えてくれるようなら、しめたものです。
「そういうことを材料にして、感想文を書けばいいんだよ」と教えてあげましょう。
中には、「うるさいな」という感じで、はっきりとは答えてくれない子もいるでしょう。
それでも、いいのです。
「付箋を貼ったところを抜き出して、感じたことを続けて書いていけば、感想文になるんじゃないかな?」とヒントを与えて様子を見ましょう。
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簡単な4構成をメモ書きにして見せてあげると、スラスラ書けるかも
作文や感想文でわかりやすく書こうと思うと必要になってくるのが、3段構成、または4段構成と言われるものです。
とりわけ、感想文の場合は、過去の入賞作品を見ても、ほぼ形式が確立されています。
自由なので、どう書いても良いはずなのですが、どうしても、上手に書こうと思うとある程度構成が必要になりますし、それを知っておくと書きやすくもなります。
そこで、代表的な4構成をメモに書いて子供に見せ、「ここはどんな内容を書いたら良いか考えてみると、書きやすいよ」など伝えてみましょう。
その構成は、次の通りです。
「読書感想文の代表的な4構成」
1、書き出し(なぜこの本を選んだかなど。4の結論から、書き出してもよい)
2、簡単なあらすじや、付箋を貼った部分から気になった一文の抜き出し
3、自分や周りと比べて思うこと(経験していても未経験でも良い)
おもしろかった場面やその感想など
4、本を読んだあと、自分がどのように変わったか(考えなど)
これからに生かしたいこと
これをメモにして子供に渡し、その4構成のメモの見出しの間に思いついたことを箇条書きで書かせます。
その時に活躍するのが、先ほど子供に貼ってもらった付箋です。
本の中ですごい!と感動したり、なぜ?と心に残った部分は、結構忘れやすいものです。
しかも全体の中で、数ページに凝縮されているものでもあります。
そこがすぐに出てこないことも、感想文を書く事が嫌になる要因の一つかもしれません。
なぜなら、何度も同じ本のページを往復して、目当ての箇所を探しながら読まなくてはならないとなると、イライラしながら探す事になりますので、当然楽しくはなくなるからです。
付箋の箇所を開き、さらっとキーワードになりそうな部分を抜き出す事ができれば、もうあとは、そのメモを参考にして、長い文章に発展させていけば良いので、あとは語彙力や文章力の問題になってきます。
もし子供が表現の仕方に詰まって聞いてきたなら、その時にはアドバイスすればいいでしょう。
そうでなければ、あとは子供に任せてみましょう。
【あらすじは書いていいのか】
「感想文には、あらすじを書いてはいけない」という指導をする学校の先生もいます。
おそらく、あらすじばかりで感想を書かない(書けない?)児童・生徒が多いので、そういうことになったのでしょう。
一般的には、長くならずに簡単に書くだけであれば、あらすじは書いてもかまわないでしょう。
しかし、あらすじを一切書かなくても、感想文を書くことはできます。
「賞」をねらうつもりであれば、あらすじを書かない方が、自分の感想をしっかり書き込めるので、有利です。
学校の先生の方針を知った上で、できればあらすじは書かない、書くとしても短く簡潔に、と言っておくと良いです。
構成メモの段階では、ストーリーを理解するためにあらすじをまとめることは、必要です。
例で学ぶ感想文の書き方
感想文の書き方を、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』で学んでみましょう。
分かりやすいストーリーで読むのに時間がかからず、感想文の書きやすい作品です。
学校の先生にも受けが良く、小学校の中学年、高学年はもちろん、中学生でも書いてもおかしくはありません。
「読書感想文の代表的な4構成」のメモを書かせる
1、なぜこの本を読んだ?
- 課題図書になっていたから
- 地獄の絵が書いてあって、面白そうだったから
- 芥川龍之介は、有名な作家だから
2、簡単なあらすじ
- 地獄で苦しむカンダタという男を見つけたお釈迦様は、カンダタが生きているときに一度だけ良いことをしたことを思い出した。
お釈迦様はカンダタを助けようと、一本の蜘蛛の糸を地獄に垂らした。カンダタは、目の前に垂れてきた蜘蛛の糸につかまって、登り始める。途中で、自分の下からたくさんの罪人たちも登ってきたことに気づいたカンダタは、「この糸はオレのものだ。下りろ」とわめいた。すると、蜘蛛の糸は切れ、カンダタはふたたび地獄へ落ちていった。
気になった一文の抜き出し
- 自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、カンダタの無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、あさましく思召されたのでございましょう。
→お釈迦様は、悲しかっただろうと思った。
→カンダタがなぜ地獄に落ちたか、よくわかった。
→みんなで一緒に登れば、きっと極楽に行けたのだろう。
3、自分と比べて、どう思う?
- 自分もカンダタのように、「下りろ」と言うだろう。
- だれでも、自分勝手な心を持っているから、カンダタを悪く言うことはできない。
- 地獄に落ちないように、生きている時に良いことをすればいい。
面白かった場面や感想
- 地獄のようすが、とてもこわかった。
- 蜘蛛の糸が光って地獄に届くところが、きれいだと思った。
4、本を読んで、どう変わった?
- 地獄に落ちたくないから、悪いことはしないと思った。
- 自分にも、カンダタのような心があることに気づいた。
小学生の感想としては、上のようなものでしょう。
言葉をよく知っている子供や、中学生であったら、「利己的」「自己中心的」「因果応報」などの語句を使えるかもしれません。
カンダタばかりではなく、お釈迦様の心情を想像すると、深みのある感想文が書けますので、ヒントとして「お釈迦様は、どんな気持ちだったのだろうね?」と声をかけてやるのも、いいでしょう。
ただし、親が「こう書けばいいのに」と思っていても、自分の感想や考え方に子供を誘導してはいけません。
親の感想文になってしまいます。
子供に教えるのは、「ヒント」だけにしてください。
感想文の例文のヒント
完成されたものではなく、構成メモの各項目を羅列しています。
こういうことなら、書ける子供は多いでしょう。
これらを連ねて、うまくつながるように文章を整えていけば、感想文ができてしまいます。
1
〇芥川龍之介は、芥川賞という文学賞に名前が残るくらい有名な作家だと聞いて、私はぜひ芥川龍之介の作品を読みたいと思って、『蜘蛛の糸』を読みました。
〇小さい頃、いたずらでクモを殺していたら、おばあちゃんが『蜘蛛の糸』の話をしてくれたことがありました。そのときはこわいと思って聞いていましたが、元々の話は、どういうものか、興味があって読みました。
2
〇『蜘蛛の糸』は、カンダタという罪人が、お釈迦様が垂らしてくれた蜘蛛の糸につかまって、もう少しで地獄から脱出できそうだったのに、自分だけ助かろうとしたために、また地獄へ落ちていったというお話です。
〇最初と最後のところで、極楽が出てきます。罪人たちが苦しんでいる地獄とは正反対のところが極楽です。極楽のことが書いてあるから、地獄のおそろしさがいっそう強く感じられました。
3
〇最初、カンダタはなんておろかなんだろうと思いましたが、自分ならどうするだろうと考えたら、自分にも同じような心があると気づきました。いや、自分ばかりではありません。人間はだれでも、利己的な心を持っていると思います。
〇自分は、地獄に行きたくはありませんが、地獄に行くかもしれません。地獄に行って苦しんだら、カンダタのような自分だけよければ、という気持ちになっても仕方ありません。
〇地獄で苦しんでいる人は、他の人に優しくできるでしょうか? 少なくとも、私なら無理です。
4
〇カンダタのことを非難できる人が、この世の中にどれほどいるでしょうか。人間は、私を含めて、みんな自己中心的だと思います。ただ、そこに少しだけの「思いやりの心」があるかどうかで、人間は極楽と地獄に分かれるのではないかと思います。
書き出しやタイトルは工夫できる
書き出しとタイトルは、工夫できます。
結論の部分から書き始めたり、会話文から始めたり、登場人物への語りかけで始めたりというような工夫をすると、面白い感想文になります。
タイトルも「〇〇を読んで」でなく感想文の内容に沿ったものにすると、より印象的になります。
でも、親が「こうしなさい」と押しつけるのはやめて、子供さんの自主性に任せてくださいね。
どんな突飛な感想もニコニコ笑って褒めましょう
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さて、この時期の子供は考えが深くなりすぎることもある、と前に書きました。
実際、子供が一生懸命考えて文章にしたものを読んでみると、大人からするとそれは逆なのでは?と思ったり、そこまで考えているのかと驚かされたりと、実にユニークな発想が書かれている場合があります。
中には、感動的な作品を読んで「少しも面白くなかった」「つまらない話だ」などと書く子もいます。
こんな感想文を見ると、親は「学校の先生から何て思われるか」「性格がかたよっているのか」などと不安になります。
しかし、このころの子供は、悪ぶりたいという心理で、本心でなくわざと書いていることもあります。
また、実際に子供にとっては「面白くない」話なのかもしれないのです。
「どこが面白くないのか、説明したらどうかな?」
「どの部分がつまらなかったか、書く方がわかってもらえるよ」
と言って、面白くない理由を書かせると、思いの外すばらしい視点を持っていた、というケースもあります。
感想文は、作品や登場人物をほめたたえるために書くのではありませんから、作品を批判する感想文でもいいのです。
たとえ、どう考えても大間違いだと思えるような内容だとしても、必ず、「あなたはそう思うんだね、すごい感想文ができたね」とニコニコ笑って認めてあげてください。
そうする事で、次の感想文への意欲につながります。
本人にとっては人格が認められた感じがして、いわゆる「自己肯定感」も育ちやすいです。
また、文章が下手でも、大目に見てあげてください。
まだ小学生なのですから、うまく書けなくても、書いたこと自体が素晴らしいことです。
うまくなくても、思ったことを表現しようとしているかということの方が重要です。
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まとめ
簡単にまとめると、小学生高学年のお子さんに読書感想文の書き方を教えることとしては以下のようになります。
- 本を読みやすいように誘導する
- 読むときに付箋でしるしを残すように伝える
- 親が書いた構成メモを渡し、文章が作れたら認めて褒める
こうすることで親子の会話も増え、押し付けることなく子供自身が作業でき、終わったら認めてもらえる。
そんなやりとりが何度か続けば、あとはもう子供自身から、やりたい気持ちが高まってくるかもしれません。
「なんで書かないの!」と怒った所で、どう書くかがわからず、それをどう伝えて良いかもわからない子供には効き目がありません。
むしろやる気をそいでしまうだけです。
親は「早くやりなさい!」というのではなく、具体的にやり方を提示する事で、本人のやる気を引き出すことができれば、大成功なのです。
最初はうまくいかない事もあるかもしれませんが、どうぞ、子供の可能性を信じて、子供自身の関心とうまく向き合いながらチャレンジしてみてください。